「液晶ディスプレイと同等の厚さ」で実用化へ
こうした便利な使い方ができる透過型メタサーフェスだが、来山氏は実用化に向けて解決しなければならない課題があると指摘する。「厚さ」だ。
メタサーフェスの制御方式はMEMSやPINダイオードなど複数あるが、中でも注目されているのが液晶方式である。高周波数帯の特性とはつまり「光に近い」ことであり、液晶ディスプレイの製造技術などが応用しやすい。

液相ディスプレイと同等の厚さを実現
ただし、これまでの液晶技術では「周波数が低くなると、液晶が厚くなる傾向があった」(来山氏)。液晶ディスプレイの厚みは3.5μm(マイクロメートル、ミクロン)であるのに対し、サブテラヘルツ波やFR3の電波を制御するには「数百ミクロンまで厚くなる」。これでは、液晶ディスプレイの既存の製造プロセスが適用しづらいうえ、制御時の「応答速度が遅くなる」「大面積化が困難になる」といった課題が生じていた。
NTTが今回開発した技術は、液晶ディスプレイと同等の3.5μmの厚みを実現したもので、これらの課題を一掃できる可能性がある。
人の動きに追従するリアルタイム制御も可能に
“世界最薄”を実現できた秘訣は、NTT独自のセル構造によって、電波の動作周波数に依存しないメタサーフェス制御を可能にした点にあるという。

NTTが独自に開発したメタサーフェス構造
液晶ディスプレイと同等の厚さを実現することで既存の製造プロセスが適用でき、大面積化が容易になる。「窓ガラスのような大きな面積のメタサーフェスデバイスを既存の工場で効率的に製造できる」(来山氏)。
加えて、液晶は薄くなるほど制御時の動作速度が速くなるため、「ミリ秒オーダーの高速応答が可能になる」ことも大きなメリットだと同氏は強調した。
従来の技術では電波の制御に1秒以上を要していたため、例えば、人の動きにリアルタイムに追従して電波を届けるといった制御は不可能だった。だが、今回開発した技術ならばミリ秒単位の高速制御も可能になる。

サブテラヘルツ波(115Ghz)による実証の成果
上の図表は、サブテラヘルツ波(115GHz)を使った動作検証の結果だ。電波の方向制御だけでなく、任意のポイントに電波を集める集中制御、複数デバイスへ電波を届けるマルチビーム制御など、様々な制御を実証した。周波数に寄らず液晶の厚さを維持できるため、5Gで使われているミリ波帯やFR3にも本技術を展開可能だ。
来山氏は今後、実環境での評価とデバイス設計へのフィードバックによってさらなる高機能化・高性能化を目指すと話した。また、本技術は移動無線通信に限らず「センシングやレーダーなどへの応用も可能」とし、電波伝搬を制御する基盤的デバイスとして、幅広いユースケースを展開できる可能性も示した。













