リアルデータ活用で差別化を図る「Sim-to-Real」戦略
AIロボティクスの開発手法として注目されるのは、「Sim-to-Real開発サイクル」だという。これは、コンピューター上の仮想空間でロボットに動作を学習させた後、実世界で動かしてデータを収集し、その結果を再び仮想空間にフィードバックする開発手法のことである。「シミュレーションだけでは限界がある。実際の現場で収集した質の高いデータをいかに活用するかが、ロボットの性能向上の鍵となる」と強調した。
また、日本の強みは、製造現場や介護施設などで長年蓄積されてきた「高品質なリアルデータ」だという。例えば、熟練作業員の動作データや日本特有のきめ細かなサービスのノウハウなどで、こうしたデータを収集・管理し、ロボットの学習に活用するためには、セキュアな通信環境とデータ基盤が必要不可欠になると解説した。
AIロボティクス戦略―リアルデータの活用
AIロボティクス時代を日本がリードするために
日本がAIロボティクス時代をリードするためには、第一に、エコシステム形成に向けた戦略の再構築が必要だという。2030年までにサービスロボットを実装し、世界でトップレベルの国を目指すには、現場を熟知した「サービスプロバイダー」の役割が重要になると述べた。また、市場特性を見極めた技術開発が重要であるとして、ロボットハンド技術、ユーザーインターフェース技術、インフラ連携技術の3分野への注力が求められ、特にインフラ連携では通信事業者の役割が大きくなるという。
加えて、企業・社会内部の「知」を武器にすることを挙げ、日本の高品質データを活用したサービスロボット向けデータ基盤を構築し、データ収集、モデル構築、AIロボット実装のサイクルを回すことが競争力の源泉となると語った。