IDC Japanは2013年9月3日、「国内テレワーク関連ICT市場予測」を発表した。2013年7月に従業員10人以上の国内ユーザー企業796社を対象にテレワークの利用動向を調査。また、テレワークに関連するハードウェア、ソフトウェア、通信サービス等を8分類にまとめて市場を分析し、2012年の推定と13年~17年の予測をまとめた。
IDC Japanソフトウェア&セキュリティグループの眞鍋敬氏 |
発表に合わせて開催された説明会において、同社ソフトウェア&セキュリティグループを統括する眞鍋敬氏は、国内テレワーク関連市場について「2012年から2017年にかけてのCAGR(年平均成長率)は6.6%。国内IT市場がほぼフラットと言われる中で、非常に良い市場と言える」と分析した。2012年の市場規模は7961億円と前年比10.4%増加。2017年の市場規模は1兆962億5000万円と予測している。なかでも、スマートフォンやタブレット端末等の新たなモバイルデバイスや、デスクトップ仮想化といったクライアントソリューションの伸びが大きくなるとし、リモートアクセス等のベースとなる通信・ネットワークサービスやアプリケーション領域も堅調に成長する見込みという。
国内テレワーク関連市場の予測【クリックして拡大】 |
市場成長の要因として眞鍋氏が強調したのが、テレワーク実施企業の急増だ。「テレワークを行っていない企業の割合が、我々の予想した以上に大きく減少した」(眞鍋氏)という。
IDC Japanでは、1週間のうち20%以上の時間を、通常時に拠点とするオフィス以外の場所からITを活用して業務を行うことをテレワークと定義し、テレワークの実施状況を調べた。なお、この定義は、国土交通省のテレワーク人口動態調査におけるテレワーカー定義(1周間に8時間以上)とほぼ同じ基準だ。テレワークの実施状況は、外勤者向けと在宅勤務に分けて調査しており、その結果、「実施していない」と回答した企業の割合は、外勤者向けは34.9%、在宅勤務は52.8%となった。2011年にも同様の調査を行っており、非実施企業の割合は、外勤者向けで30.8ポイント、在宅勤務で20.4ポイントも減少した。
テレワーク利用動向調査では、テレワークを「実施していない」企業の割合が2011年調査時点から急減した【クリックして拡大】 |
なんらかの形でテレワークを実施する企業が急増した理由について眞鍋氏は、「東日本大震災の影響でテレワークの重要性が増し、12年度から事業継続対策を行ったことが読み取れる。また、企業間の競争が激化したことで、生産性の向上が強く求められる状況になったことも影響している」と分析した。テレワークを実施した理由については、「スピードの向上、従業員満足度の向上による労働力の確保、そして事業継続性が3大理由」に上がるという。
テレワークを実施する理由と実施しない理由【クリックして拡大】 |
一方、実施していない企業は、セキュリティに対する不安を挙げるとともに、「テレワークにするべき業務がない」と回答するケースも少なくないという。この点に関しては、「(本当に)ないのではなく、見つけられていないのではないか」との見解を示した。テレワークにすることで効率が向上する業務があっても、バックエンドのシステムが電子化されていなければ、テレワークに移行するのは難しくなる。こうした潜在的な課題とニーズを掘り起こすことが、テレワーク関連ソリューションを提供するベンダーやSIerのビジネスチャンスを広げると指摘した。
テレワークをすでに実施している企業は、その業務範囲を拡張するための追加投資にも積極的な傾向が見られ、「この層が短期的に市場の成長を牽引する」と同氏は予測。また、中長期的な市場成長には、非実施企業に対するテレワークの目的の訴求やコンサルティング、さらには、導入しやすいパッケージ型ソリューションの提供等が必要だとの見解を示した。