<特集>企業・自治体のための衛星通信「超」入門【NTN開発の世界動向】LEOコンステ台頭の次に来るのは?

LEOコンステレーションに注目が集まっているが、NTNの進化はそれだけではない。GEO衛星も高度化し、軌道間、衛星と地上5G網の連携も進む。目覚ましく動く、NTN技術開発の最前線を概観する。

日本発のソフトウェア定義衛星

HTSの進化系統はもう1つある。小型化/フレキシブル化だ。「Small Flex HTS」と呼ばれるこのGEO衛星は、「フェーズドアレイアンテナやビームホッピングといった高度な機能を備えており、BoeingやThales Alenia、Airbus、日本の三菱電機が開発している」(豊嶋氏)。

このFlex HTSの特徴は、ソフトウェア技術を活用して、より柔軟な運用を可能にする点にある。そのため、ソフトウェア定義衛星(SDS)とも呼ばれる。今後、衛星通信への機能要求が多様化・複雑化していくことは間違いなく、機能をできる限りソフトウェア化することで、軌道上でプログラム変更により機能を柔軟に追加・更新できるようにする。

日本国内でこの端緒となるのが、2026年以降に打ち上げ予定の「技術試験衛星9号機(ETS-9)」である。三菱電機をプライムメーカーとして、JAXA、NICT、総務省らが開発。通信ペイロードをフルデジタル化することで、ビーム照射地域や周波数帯域幅等を変更でき、軌道上でSDS技術を実証する。

豊嶋氏によれば「RFと光をハイブリッドに使う、他国にはないユニークな衛星」でもある。Ka帯を使った100Mbps超の高速大容量通信に加えて、地上局とのフィーダーリンクに光による10Gbps級の無線通信を使う。

NICTらはこのEST-9を「軌道上の宇宙実験場としてSDS技術や衛星5G技術などを実証するためのプラットフォームにしていく」(同氏)計画だ。将来的には、静止軌道で安定した通信が可能なGEOの特徴を活かして、LEOやHAPSと連携するマルチオービットのハブとしての役割も期待されている。

Starlinkは光通信もリード

2020年代に入ってNTNの新たな柱となったLEOコンステレーションは、StarlinkのほかにもEutelsatOneWeb、O3b mPOWER、Iridium-NEXTといった複数のサービスが展開中だ(図表2)。

図表2 低軌道コンステレーション

図表2 低軌道コンステレーション

とはいえ、Starlinkの存在感は圧倒的だ。

現時点で打ち上げ済みの衛星数は8600機超。2024年には、ブロードバンド衛星通信の主力帯域であるKa帯/Ku帯に加えて、E帯(71~86GHz)の使用許可を米連邦通信委員会(FCC)から取得。E帯によって衛星1機あたりの通信容量を大幅に増やすことができ、第2世代のStarlink衛星(7500機)で使用する。

また、Starlinkは光衛星通信でも世界をリードする。Starlink衛星はすでに、最大200Gbpsの光衛星間リンク(ISL)を搭載している。衛星1機あたり3台の宇宙レーザーを備えており、3000機以上の衛星が光通信によって大規模なメッシュネットワークを構成している。

光衛星通信には、アンテナが小型化できる、電波干渉を受けないなどのメリットが多い。HAPSも含めてLEOコンステレーション以外のプラットフォームへの技術転用も期待できる。また、今後はGEO/LEO、HAPSの機数が爆発的に増えることも予想されるが、その場合の周波数逼迫や電波干渉の増加を解消する有効な手立てにもなる。

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