セキュリティ確保には一工夫
Starlinkは難接続環境における有効な通信手段として、すでに多くの現場で活躍している。「1つの衛星で通信できなくなった場合でも、他の衛星でカバーする仕組み」(KDDI ソリューション推進本部 ネットワークサービス推進部 サテライト企画グループ グループリーダーの神田外志夫氏)により、一定の安定性が確保されている。神田氏は「目立った障害や通信速度の低下はなく、お客様満足度も高い。SpaceXの宇宙技術はピカイチだ」と高く評価する。
一方、衛星通信全般にいえるように、Starlinkも天候の影響を受けやすい。荒天時には通信が不安定になり、速度低下や通信断が生じる可能性がある。また、サービスはベストエフォート型であり、帯域保証は通常提供されない。
業務目的の使用で注意すべきなのは、Starlinkが「インターネット接続サービス」である点だ。つまり、閉域構成は標準では提供されないため、高いレベルのセキュリティや可用性が求められる場合は工夫が必要になる。
NTTドコモビジネスの発電所事例では、重要インフラを守るために高度なセキュリティが要求された。そこで同社のクラウド型WANサービスをStarlinkと併用し、インターネットVPNを用いて閉域網接続を実現した(図表4)。
図表4 Starlinkを用いた閉域環境の構成(発電所事例)
KDDIもインターネットVPNと組み合わせた閉域網接続サービスを提供している。今後、インターネットを経由しない完全閉域網サービスの提供を開始する予定だ。
独自技術で安定性を高める取り組みもある。Coltテクノロジーサービスでは、Starlinkと4G/5Gを組み合わせて運用できる「ワイヤレスインターネットアクセス」を提供。LEO回線においても、契約帯域の50%を保証し、さらに可用性、障害復旧時間、納期、アクセス速度といった項目でSLAを明示している。
各社はStarlinkの可能性を最大限に引き出すために、用途や環境に応じたソリューションを提供している。遠隔拠点での通信確保やBCP対策、仮設拠点での早期立ち上げといった課題を抱えている企業・自治体は、要件を整理したうえで通信事業者に相談してみることをおすすめしたい。