新製品ラッシュのPBX/ビジネスホン市場動向≪ビジネスホン編≫――新型コードレスや人感センサーなど工夫が続々

新製品が相次いで発売され、活気を取り戻し始めているPBX/ビジネスホン市場。市場全体の動向と、ユーザーニーズに応えるためのメーカー各社の取り組みをレポートする。今回はビジネスホン編をお届けする。

前回のPBX編に続き、今回はビジネスホン市場を見てみよう。

コードレス電話の新方式「DECT」を採用

日立製作所は今年5月、新製品「integral-F」を投入した。市場のニーズに応え、従来機よりも回線容量を拡張している。「従来機では従業員数1~49人の事業所までしか対応できなかったが、新製品では50~99人の事業所にも対応でき、約10万事業所が新たなターゲットになる」と、日立製作所の情報・通信システム社、通信ネットワーク事業部ソフトウェア開発本部ソフトウェア設計第三部技師の中嶋基博氏は話す。

また、integral-Fではレガシー内線とIP内線の電話機のラインナップを統一し、同じ使い勝手で利用できるようにした。さらにスマホ連携にも対応。インターネット経由のリモート保守や障害発生時に保守者にメール送信するといった保守機能の充実も図っている。

日立の「integral-F」
日立の「integral-F」。ナカヨも「NYC-iF」という名称で同一の製品を市場に投入

ナカヨ通信機も、同じく新製品「NYC-iF」を発表した。現在はスマホを内線電話機として利用できるにとどまっているが、営業統括本部営業部部長の和田哲氏は「スマホを利用してコミュニケーションをシンプルかつスマートに行えるソリューションの開発に取り組んでいる」と話す。その一端を垣間見せたのが、一昨年リリースしたAndroid搭載タブレット型IP端末「GRANYS」。ビジネスホンの端末として利用できるだけでなく、情報端末として業務支援や資料閲覧などにも使うことができる。

integral-FとNYC-iFとも、コードレス電話機の通信システムに「DECT方式」を採用しているのも特徴の1つ。これにより、長距離タイプでは親機から300m離れたところまで子機を使って通話できるだけでなく、データ伝送速度がPHSの約20倍となる。

ナカヨ通信機・情報研究室部長の押之見章彦氏によれば、「将来的には音声だけでなく画像も送信するといった活用方法が見込める」という。

人感センサーと連携して不審者を威嚇

OKIとサクサは、今年4月にそれぞれ「CrosCore S」「PLATIA Std」という名称で新製品をリリースした。端末の種類を豊富に用意したのが特徴の1つで、企業ユーザーが用途に合わせて選ぶことができる。多機能電話機の人感センサーにより、オフィスへの不審者の侵入を感知し、大音量の警報音や着信ランプの点滅で威嚇する機能も備えている。スマホ連携にも対応可能だ。

OKIの「CrosCoreシリーズ」(左)とサクサの「PLATIA Std」の電話機
OKIの「CrosCoreシリーズ」(左)とサクサの「PLATIA Std」の電話機

今回リリースした新商品は小規模事業所向けのものだが、今夏にはより規模の大きい事業所向けに、同じシリーズの製品として新たに2機種投入する予定だ。

サクサはこれまで中小規模向けの「Agrea(HT700Ⅱ)」とその上位機種である「Agrea(LT900)」をラインナップし、主装置と電話機がまったく異なるユニットを販売してきた。だが、PLATIAシリーズではどのクラスの製品でも同じ電話機を使えるため、例えばユーザー企業が上位機種に交換しても利用中の電話機をそのまま使えるというメリットを提供できるようになった。

さらにPLATIAシリーズでは「すべての機種で同一の工事性を実現しており、販売店にとっても取り扱いやすい製品になっている」とサクサ・ソリューション営業統括本部営業企画部営業推進グループ担当部長の柳沢忍氏は強調する。

月刊テレコミュニケーション2013年6月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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