<特集>逆襲の6G 5Gの教訓を活かせISACの実力と課題 6G時代を支える「通信とセンシングの融合」

通信とセンシングを融合する技術である「ISAC」(Integrated Sensingand Communication)は、“センサーレス”で人やモノを検知できるというメリットがあるが、マネタイズの観点等では課題も残る。

センサーやカメラを使わず、スマートフォンや携帯基地局が発する電波で人やモノの存在を捉える──。こうした世界の実現のカギを握る技術が、通信とセンシングを融合する「ISAC」(Integrated Sensing and Communication)だ。

今年の夏頃から本格化する6Gの標準化において、ISACは6Gの重要な技術要素の1つとして検討が進められていく予定だ。ITU(国際電気通信連合)の無線通信総会(RA-23)で承認された「IMT-2030」(6G)のフレームワーク勧告においても、ISACが6Gの利用シナリオを支える基盤技術として位置づけられている。

ISACの特徴とユースケースは?

ISACは前述の通り、通信用の電波により人やモノを検知できるため、新たなセンサー機器の導入・管理が不要なことがメリットだ(図表1)。また、カメラや赤外線を用いたセンシングでは、特定の方向の人・モノしか検知できず、遮蔽物のある見通しの悪い場所ではセンシングが難しいという課題がある。

図表1 既存のセンサーネットワークとISACの比較

図表1 既存のセンサーネットワークとISACの比較

一方、ISACは利用する周波数によるものの、夜間や遮蔽物が多い環境でも高精度な検出が可能なうえ、カメラのように映像を記録しないことから、プライバシーに配慮できる点も大きな特徴だ。

3GPPでは、ISACの多様なユースケースを示しており(図表2)、その代表例にスマートシティがある。具体的には、観光地の人流や高速道路の混雑状況の推定、線路への人・動物の侵入検出、ADAS(先進運転支援システム)の補助、交差点の死角に潜む障害物の検知などが挙げられる。

図表2 3GPPで規定されたISACのユースケース

図表2 3GPPで規定されたISACのユースケース

また、降雨量や洪水のモニタリングといった防災用途、HAPS等が送信する電波を用いたドローンなどのUAV(無人航空機)の追跡・衝突回避にも活用できる可能性が高い。

もちろん、ISACは屋内環境でもその力を発揮するだろう。例えば、工場内で稼働するAGV(自動搬送ロボット)・AMR(自律走行搬送ロボット)のトラッキング・管理や、作業員の動き・作業状況の把握といった産業用途、非接触・非侵襲での高齢者の見守り、健康・睡眠状況のモニタリングなど、医療・ヘルスケア分野への展開も見込まれている。

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