M2Mイノベーションの時代[第1回]M2Mの最有力サービス「テレマティクス」は欧米ではすでに第2フェーズに入った

M2M(Machine to Machine)を活用すると、どんなイノベーションが可能なのか。本連載では、世界の先駆的事例などを通して、M2Mでビジネスやサービスを革新するためのヒントをお届けする。第1回のテーマは、M2Mの最有力市場の1つといわれる「テレマティクス」だ。

M2Mの最有力サービス・アプリケーションは間違いなくテレマティクスである。ある大手リサーチ会社の予想でもテレマティクスは有望サービスの上位にランクしている。日本ではM2Mで使いやすい通信環境が未整備であったこと、3G対応の端末が未開発あるいは高価だったこともあり、基本的に自動車メーカー主導型となっており、その認知度や普及率は欧米に大きく劣る。

欧米、特に欧州においてはフリートマネジメント(車両管理)としてのテレマティクスは、すでに長距離移動のトラックでは必須の機能だ。GPSによる位置情報把握とそれに伴う行動支援、荷主へのリアルタイムなレポート、または効率的な運行を行う上で非常に重要なサービスであり、その機能も日々進化している。こうしたテレマティクス先進ユーザーでは、さらなる高度化に向けた取り組みが始まっているが、その上で最大のキーとなるのがOBD IIの利用である。

次世代テレマティクスの鍵を握るOBDとは?

OBDとはOn Board Diagnostic Systemの略称で、車載コンピュータによる自己診断システムのことだ。

OBDはそもそも、米国で最も厳しい環境基準を設けているカリフォルニア州が排気ガス規制のために制定した“マスキー法”を順守させるために考案されたと言われている。マスキー法を順守させるには、排気ガスの排出量を計る仕組みが必要だが、そこでCARB(環境保護局)が車の排気ガス生成に関わる情報を電気的に取り出すために考案したのがOBDである。

1994年に投入されたOBDは1996年以降、米国で発売される新車への搭載が義務化されたことにより一気に普及。1998年には機能強化したOBD IIが開発され、現在でも使用されている。ちなみに日本はOBDへの対応が遅れ、2008年以降にようやくOBD IIが義務化された経緯がある。

OBD IIコネクターからは様々な情報を入手することができる。例えば車検の際、OBDテスターと呼ばれる装置をコネクターに接続することで、車の状態を自動診断することが可能だ。さらに現在では、OBD IIからの情報をリアルタイムに3G等でサーバーに送ることにより、位置情報+車状態情報を活用した新サービスを創出する試みが進んでいる。

OBD II対応デバイスの例
OBD II対応デバイスの例

Pay As You Driveへの応用

その1つが“PAYD”での活用である。PAYDとはPay As You Driveの略で走った距離に応じて課金するモデルである。

例えば今流行りのカーシェアリングには様々な課金モデルがあるが、走行距離に応じた課金も1つの方法だ。車に内蔵されている距離計(オドメータ)を見て課金するやり方もあるが、OBD IIと3Gを活用すれば、瞬時に実距離を遠隔からでも把握することが可能となる。車を降りて精算する時には走行距離とそれに伴うガソリン代がすでに計算されており、その場で精算ができるという仕組みだ。あるいは、あとでまとめて請求を受けるという使い方も可能であろう。

[連載目次]M2Mイノベーションの時代

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