携帯3社のLTEサービスが出揃った2012年秋から、携帯電話の通信速度競争にさらに拍車がかかってきた。
KDDIは11月から、他のキャリアはまだ一部地域でのみ展開しているLTEでの下り最大75Mbpsのサービスを、一気に実人口カバー率84%のエリアでスタートさせた。他方、他社に先駆けて2010年12月からLTEを展開するNTTドコモは、2012年11月、新潟や金沢などの地方都市を皮切りに、LTE対応スマートフォンによる下り最大100Mbpsの高速データ通信サービスの提供を開始。今春には、下り最大112.5Mbpsに対応する端末を投入する。ソフトバンクも2012年10月にAXGP(TDD方式のLTE、TD-LTEの互換システム)による下り110Mbpsのサービスを始めた。携帯電話は今後どこまで高速化されるのか。
携帯各社が展開している現行のLTEは、電波(搬送波)の幅を最大20MHz(FDDの上り下りの片側分)まで広げることで、下り最大150Mbpsを実現できる。これが当面の上限だ。
そして、早ければ2014年に、この枠を超えてさらなる高速・大容量のデータ通信を可能にする新通信方式の導入が始まる。それが「LTE-Advanced」――現在のLTEの約30倍、3Gbpsの高速データ通信を実現する能力を持つ、LTEの発展規格だ。Part1では、このLTE-Advancedの技術的特徴を見ていく。
LTEの拡張規格
LTE-Advancedは、現在のLTE規格に新たな要素技術を付加して、さらなる高速・大容量化、機能の拡充を実現するもので、現行のLTEと互換性を持っている。
図表1 LTE-Advancedの特徴 |
規格の策定は、LTEと同じく移動通信技術の標準化団体3GPPで行われており、2011年3月に固まった標準規格リリース10以降で規定されているLTEの発展技術の総称がLTEAdvancedとされる。2013年1月時点では、リリース10と、2012年9月に固まったリリース11がLTE-Advancedの技術仕様となる。具体的には、
- (1)複数のLTE搬送波を受信側で束ねて高速化を実現するキャリアアグリゲーション(CA)
- (2)空間多重技術のMIMOの拡張
- (3)性格の異なる基地局を同一エリア内に混在させる技術の総称であるヘテロジニアスネットワーク(HetNet)
- (4)隣接基地局が連携して効率を向上させる「セル間協調送受信(CoMP)」
- (5)基地局と端末の通信に使われる電波に他の基地局を収容して置局を容易にする「リレー伝送」
などが、LTE-Advancedの要素技術だ。
携帯キャリアは、これらのうちサービスに必要なものを、新たに構築するネットワークに実装、あるいは既存のLTEの設備をアップグレードする形で導入することができる。2013年から順次、LTEの基地局装置・ソフトウェア、端末などに実装され、2013年後半から北米などで導入が始まるものとみられている。
日本でも、2012年4月に情報通信審議会で、第4世代移動通信システム(4G、IMT-Advanced)の1つとして、LTE-Advancedの導入に向けた技術条件の検討がはじまった。2013年6月に予定されている情通審答申を受けた制度整備を経て、2014年初旬には導入が可能になる見込みだ。