「携帯基地局建設で独自のPMに強み」――レンドリース・ジャパン ガウチ社長兼CEO

携帯電話基地局建設事業を手掛けるレンドリース・ジャパンはPM(プロジェクトマネジメント)手法を強みに日本市場に参入、独自の地歩を築いている。LTE時代における日本の事業戦略を聞いた。


――レンドリース・ジャパンは日本で5万局以上の基地局建設を担っていることで知られていますが、もともとは建設・不動産事業を手掛けているグローバル企業だそうですね。

ガウチ 当社は1958年に設立され、世界30カ国で不動産開発・投資、建設、運営と幅広い事業を展開しています。本社はオーストラリアのシドニーですが、ロンドン五輪の選手村、シドニー・オペラハウス、マレーシアのクアラルンプール・シティセンターなど各地で大規模なプロジェクトに携ってきました。

日本では88年に米シャール・アソシエイツの日本支社として設立され、建設会社として建設請負工事に参加してきました。92年にボヴィス・グループに買収されて以降、買収や統合を繰り返し、2011年に今の社名になりました。現在は約1200人の従業員が働いています。

国内で初めてPMを導入

――95年に日本で初めてPM(プロジェクトマネジメント)を導入したそうですが、これはどのようなものですか。

ガウチ PMは、もともと米国や英国、オーストラリアの建設プロジェクトで採用されてきた手法です。マネジメントの専門家が企画の段階からプロジェクトに参画し、発注や施工、品質管理、安全管理までトータルにマネジメントします。

設計者でもない、工事会社でもない、第三者の専門家が独立した立場で、さまざまなプロジェクト関係者からの意見や要望を受け、それを評価し、自らも提案を行うことで、お客様にとって最も望ましい結果を導きだすことができます。これまでに、シャネル銀座本店やオラクル青山センター、汐留シティセンターなどのPMを担当してきました。

――顧客企業から受託を受けたゼネコン(元請け)が下請けに業務を丸投げする方式が日本では一般的ですが、PMはどのような点が違うのですか。

ガウチ PMは、専門知識に基づきプロジェクトを顧客企業の目的に向けて管理する業務です。工程管理が明確になり、コスト削減や品質向上にもつながります。これに対し、元請方式はコストの内訳がわかりづらく、工程も不透明になりがちです。

顧客企業、特に外資系企業では透明性を重視することから、多額の予算がどのように使われているか、プロジェクトがどのように進行しているのかを把握したがる傾向にあります。最近では、こうしたPMのメリットが日本企業にも浸透しつつあります。

――日本の通信市場への参入はどういうプロセスだったのですか。

ガウチ 2001年にオペレータの事務所移転プロジェクトに携わった際に、基地局建設費のコストダウンに関するコンサル業務の依頼を受け、実施。ベンダーの3Gネットワーク構築プロジェクトをわずか16人で開始し、私も担当者の一人としてプロジェクトに関わり、02年には、1年間で約1万局構築するという大規模プロジェクトに参画し、物件探索からサービスインまで一括したPM業務を担いました。

その後、03年から2年間でさらに1万局以上の3G基地局展開プロジェクトのPMを実施したことをきっかけに、レンドリース・ジャパンとして本格的に通信の世界に参入しました。

――通信業界におけるインフラ工事のPMは、どういう形態のビジネスですか。

ガウチ 通信のPMは建設のPMとは業務が一部異なり、協力会社の選定に始まり、置局開発、設計、施工、検収、サービスインに至る全工程について専門的な知識を持って徹底的にマネジメント業務を遂行し納期、コストを管理します。

新たに基地局を新設するだけでなく、支障移転や撤去、増設工事などの要望にも対応します。また、当社のテレコム部門は北海道から沖縄まで10地域に拠点を持ち、全国どこでもサービスを提供することが可能です。

――日本市場では、PMを実行できる企業との競合はないのですか。

ガウチ 日本の建設会社は設計や工事などそれぞれ得意分野があります。また、特定の地域ではマネジメント力を発揮できる企業もあります。しかし、通信インフラ工事のプロジェクトを成功させるには、それらすべてがうまくいかなければなりません。特に全国規模で数千局単位の基地局建設の全体を管理しようとすると非常に複雑で、かなりのスキルが要求されます。

我々は日本におけるPMの経験が最も長く、スタッフをトレーニングして少しずつ規模を拡大してきました。ですから、他社が簡単にPMに参入しようとしてもなかなか難しいと思います。

――LTE時代になってますますネットワークインフラの重要性が高まっており、通建業者の力量が問われるようになっています。

ガウチ 日本は国土が狭い割に基地局の数が多く、カバレッジが非常によいので、通信キャリア各社のネットワーク品質は海外とは比べものにならないほど優れています。先日、マレーシアのクアラルンプールを訪れた際に中心部で電波が入らなかったのですが、日本ではありえない話です。

今後カバレッジはどの通信事業者も整ってきますから、むしろキャパシティにフォーカスすることが重要になると見ています。フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行がさらに加速することに加えて、将来的には携帯電話だけでなく、いろいろなものが無線とつながるようになるため、キャパシティを広げなければなりません。

また、次のLTE-Advancedは3.4~3.6GHz帯と、既存の2GHz帯よりも高い周波数帯を利用することが予定されており、エリアの隙間を埋める基地局を作ることが不可欠です。その意味で、今後5~10年間は通建業界がやるべき仕事は非常に多く、この業界の将来性は明るいと考えています。

月刊テレコミュニケーション2013年1月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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アンドリュー・ガウチ(Andrew Gauci)氏

オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学卒。同国の建築会社シビル&シビックを経て、熊谷組で香港の橋梁建設プロジェクトに従事。2006年にボヴィス・レンドリース・ジャパン(現レンドリース・ジャパン)にて執行役員となる。07年12月にレンドリース・ジャパンの代表取締役社長兼CEOに就任

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