重要顧客に帯域を優先割当
それでは、ブリッジウォーターのソリューションでは、具体的にどのようなことが可能なのか。まずはパーソナライゼーションに利用できる加入者情報について見てみよう。同社のソリューションで統合的に扱えるのは、(1)ユーザーのID、事前に設定した内容やユーザープロファイルなどの「静的な情報」、(2)どの端末を利用しているか、今どこにいるかといった「動的な情報」、(3)「課金情報やユーザーの行動履歴などの「蓄積された情報」である。これらの加入者情報を条件にポリシーを設定し、個々のユーザー毎にカスタマイズされたサービスを提供できる。
例えばプレミアム契約の有無という「静的な情報」を条件に組み入れると、「あるユーザーがプレミアム契約を結んでいる場合に、週末のみゲームをダウンロードし放題にする」といったポリシーが設定できる。
また、プリペイドの残高という「動的な情報」を組み入れ、「あるユーザーが音楽配信サイトでミュージックビデオをダウンロードしようとする際、料金が加入者のプリペイド残額を超えている場合は、そのユーザーのアクセスを支払い手段選択画面にリダイレクトする」といったポリシーの設定も可能だ。
大事な点は、こうしたポリシーを柔軟に設定でき、迅速にサービスを展開できることだ。エド・ゴオネク社長兼CEOは「従来実現できなかったエクスペリエンスを加入者に提供できるようになり、新たな収益の創出にもつなげられる」と語る。
同社のソリューションを使って、加入者中心のサービスコントロールを行っている例としては、まず香港の携帯電話事業者スマートン・ボーダフォンが挙げられる。スマートン・ボーダフォンはHSPAサービスにおいて、プレミアムプランに契約したユーザーに対して帯域を優先的に割り当てているほか、大口の企業ユーザーなどの重要顧客にも帯域を優先的に割り当てているという。また、WiMAXと3Gとのシームレスサービスを提供している米スプリント・ネクステルは、このソリューションを使って、1日単位でサービスを利用できる料金プランを実現している。
ブリッジウォーターシステムズのエド・ゴオネク社長兼CEOと日本でのパートナーであるマクニカネットワークスの宮袋正啓代表取締役社長 |
着メロの収入が倍増
ゴオネク氏は、高いパフォーマンスと信頼性、拡張性もブリッジウォーターの優位性として強調する。
例えば、同社製品は米国トップの携帯電話事業者ベライゾン・ワイヤレスに採用され、8000万ユーザーの月300億ものトランザクションを処理しているという。また、「AAAサーバーを当社製品にリプレースしたことでパフォーマンスが8倍に向上し、結果的に着メロの利用者が増加して収入を倍増させたオペレーターもいる」そうだ。
同社のAAAサーバーは移動通信事業者の間で広く導入されており、特に「CDMA2000/EV-DOオペレーターの約65%に採用され、WiMAXでもトップの座を占めている」という。また、PCRFでもシェア約15%と1位を確保している。
さらに、CDMA2000、GSM/W-CDMA、WiMAXなどのシステム毎にラインナップが整備されており、それぞれについて他ベンダー製品との相互接続性が検証されていることも同社製品の大きな特徴である。
今年9月には、新たにLTE向けのラインナップを発表。これは実績のあるPCRFに、①LTEで顧客情報管理を担うHSS(Home Subscriber Server)と②既存の3GのAAA/HSS/HLRなどとの間で情報の橋渡しをする「Subscriber Data Broker」の2つの新製品を加えたもの。②は既存の3G網とLTEを共通運用する際に重要な役割を果たすものである。「LTE向け製品では、米国と日本市場を重視している。非常にいいポジションにあるWiMAXのように、LTEでも成功を収めたい」とゴオネク氏は意気込む。
海外での成功には、モトローラやアルカテル・ルーセントといった大手ベンダーがチャネルパートナーになったことが貢献したが、日本でも同様の戦略だ。マクニカネットワークスの宮袋正啓代表取締役社長は「まずは国内大手ベンダーに採用を働きかけていきたい」と話す。