「Financial Freedom」――。日本語に訳すと「お客様をお金の心配から解放する」といった意味になるが、これを企業理念に2001年に誕生したのが東京スター銀行だ。
預金するだけで繰り上げ返済と同じ効果がある「スターワン住宅ローン」や、資産形成のための情報とアドバイスの提供に特化した新しい形態の銀行店舗「ファイナンシャル・ラウンジ」など、創業から11年経った今、その理念は従来の銀行が提供してこなかった数々の斬新なサービスとして具現化している。
その東京スター銀行が、モバイルデバイスを活用した業務改革に本格的に乗り出している。2012年5月、その第一歩として、iPhone 4Sの導入とコミュニケーション基盤のMicrosoft Exchangeへの移行に踏み切った。
「目的は、我々のビジネスを進化させること。もっとありていに言えば、行員の業務効率と情報リテラシーの飛躍的な向上が狙いだ」と専務執行役 最高情報責任者(CIO)の村山豊氏は語る。
東京スター銀行 専務執行役 最高情報責任者(CIO) 村山豊氏 |
全国の中堅・中小企業を回る営業マンをiPhoneが支援
東京スター銀行のビジネスは、リテール(個人向け)とコーポレート(法人向け)に大きく分けられる。リテール部門は先に紹介したスターワン住宅ローンをはじめとする新サービスなどが名高いが、一方のコーポレート部門についてもユニークなポジションを築いている。
これまで大企業を中心に提供されてきた証券化商品やノンリコースローンなどの高付加価値サービスを、東京スター銀行では中堅・中小企業向けにも提供しているのだ。
こうした高付加価値サービスには、高度な金融知識ときめ細かな対応が不可欠である。そこで同行ではコーポレート担当の行員を基本的に東京・赤坂の本社に集約し、本社から全国へと出向くスタイルを採っている。
東京スター銀行が今回iPhoneを配布したのは経営幹部と、この全国を飛び回る機会が多いコーポレート担当の営業員たちだ。「まずは、いつでもどこでも社内メールとスケジュールを見られる環境を作ろうと考えた」と村山氏は説明する。
Exchangeの利用イメージ。左がメール、右がスケジュールの画面だ |
iPhone導入以前、同行ではごく一部の人を除いて、外出先から社内メールやスケジュールは閲覧できなかった。主としてセキュリティ上の理由からだが、このため出張中の営業員が数日にわたってメールを確認できないことも珍しくなかった。
それが外出先でもメールが利用できるようになったことで、「社内での連携がより円滑になり、次のアクションも素早く取れるようになった。顧客へのクイックレスポンスも実現している」(村山氏)という。
東京スター銀行 ITグループ ITネットワーク&コミュニケーション チームリーダー 大串秀明氏 |
また、ITグループ ITネットワーク&コミュニケーション チームリーダーの大串秀明氏は、「以前は会社支給のフィーチャーフォンを使って、何でも電話で確認していた。しかし今はiPhoneでメールやスケジュールを確認できるので業務効率が向上し、通話料も削減できた」と話す。