(3)アプリケーション遅延の排除
このようにプロトコルの仕様そのものがWANのスピードを制限しているケースはTCPに限った話ではない。多くのアプリケーションプロトコルにも共通することだ。
このためSteelheadには、数多くのアプリケーションプロトコルの最適化機能も実装されている。「他社と最も違うのがこのアプリケーションレベルでの最適化」(寺前氏)だという。
CIFSを例にとって説明してみよう。CIFSは、Windowsのファイル共有に利用されているプロトコル。WANで極端にパフォーマンスが悪くなる代表的なアプリケーションの1つだ。
CIFSがWANで非常に遅くなる理由は、データを1ブロック送るたびに要求-応答確認のやりとりを行うためである。そこでSteelheadでは、ブロック1のリクエストがあったら、ブロック2、ブロック3……と続きのデータも先読み。そして、クライアントからのブロック要求には、ローカルにあるSteelheadが代理応答することで高速化を行う。
図表6 アプリケーション遅延の排除の例(CIFSの場合) |
(出典:リバーベッドテクノロジー) |
なお、この代理応答については注意すべき点があるという。「他社製品の中には、共有ファイルの編集中にWANに障害が発生すると、ファイルが壊れてしまうケースもあると聞いている。これは、ファイルのロック制御など、WAN高速化装置が真似たらいけない部分も代理してしまっているのが原因。アプリケーションを最適化するには、プロトコルをしっかりと理解したうえで作り込む必要があり、それが他社がアプリケーションの最適化に積極的でない理由となっている」(寺前氏)。
図表7は、Steelheadで最適化できる主なアプリケーションと、その高速化効果をグラフ化したもの。リバーベッドでは、最適化に対応するアプリケーションの種類をコンスタントに増加させていっている。
図表7 Steelheadのアプリケーション最適化の効果 |
(出典:リバーベッドテクノロジー) |
以上、「なぜWAN高速化装置がWANのパフォーマンスを最適化できるのか」を見てきた。同時に、「なぜWANの帯域を広げるだけではWANは高速化できないか」も理解できたのではないだろうか。
ビジネス全体のスピードを左右するIT。そして、そのITのスピードを決定付けるWANは、帯域を広げるだけでは高速化できない――。これがIT部門がいまWAN最適化装置に注目しなければならない1つめの理由である。
ただ、ここまで聞いても依然、「でも、我が社にWAN高速化装置は必要ないよ」というIT部門の方は少なくないだろう。しかし、それでもあなたには、WAN高速化装置に注目しなければならない理由がある。
次回の後編では、「実は困っていないのは本社だけ」「分散化時代の到来で、今後ますますWANが重要になる」という、残る2つの理由を紹介する。
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