KDDI高橋専務インタビュー「OTTと協調しながらバリューを伸ばす」

3M戦略の下、「auモメンタムの回復」とともに復調を遂げているKDDI。「バリュー」という新セグメントの責任を担う高橋誠専務は、OTTとの協調関係を基本にしながら、通信キャリアの強みを活かし、「ユーザーとの接点を強化していく」と語る。


――KDDIでは、従来の「移動通信」「固定通信」という区分をあらため、今年度から「パーソナル」「バリュー」「ビジネス」「グローバル」という新セグメントに再編します。新規事業統括本部の事業領域はバリュー(家庭および個人向けのコンテンツ・決済サービスの提供)に該当しますが、今後どのように伸ばしていくのですか。


高橋
 現状、フィーチャーフォンのバリューが予想を上回るスピードで落ち込む一方、スマートフォンのバリューは着実に伸びています。

ただ、スマートフォンのバリューについては一からやり直さないといけないと考えています。というのも、フィーチャーフォン時代のコンテンツは、お客様は必ずKDDIのポータルサイトであるEZwebから閲覧・取得するようになっていましたが、スマートフォンになってフェイスブックやグリー、ディー・エヌ・エーのように自分たちでユーザー会員を持つプレイヤーが増えており、ユーザー接点が分散しているからです。お客様の立場からすると、必ずしも通信キャリアのサービスを利用する必要がなくなっています。

――では、KDDIはどのような役割を果していくのですか。

高橋 そうした企業の方がユーザー接点を作ることに長けているので、そこは任せるとして、我々の一番の強みである決済を活かすことを考えました。SNSであれデジタルコンテンツであれ、決済のところには必ず入っていこうとしています。

実は決済分野で他キャリアよりも進んでいるのが、イーコマースです。自社のコンテンツとして「auショッピングモール」を運営しているだけでなく、楽天やYahoo!のショッピングサイトでもauかんたん決済に対応していただいています。PCで買い物をしても、代金はauの月額料金と一緒に請求されるので便利です。楽天edyもauかんたん決済でチャージできます。このように、まずは決済のところ
を広げてきました。

しかし、その方向性では将来的に行き詰まってしまいます。経営陣がいろいろと考えた結果、生まれたのが「3M戦略」であり、auIDをベースにユーザー接点を取り戻す狙いから、「auスマートパス」などのサービスを作りました。

――「マルチネットワーク」「マルチデバイス」「マルチユース」からなる3M戦略の第3弾として、Android 4.0を採用したSTB(セットトップボックス)「Smart TV BOX」のトライアルを8月に開始し、今秋から本格展開します。

高橋 もともとCATVは多チャンネル放送を見るためのSTBを入れていますが、Smart TV BOXは単にテレビ番組を視聴するだけでなく、インターネットやKDDIのサービス、アプリにも接続することで付加価値を提供します。

YouTubeやニコニコ動画を見ながらSNS上でコメントし合うことも可能ですし、しおり機能により、外出先でスマートフォンで視聴していた動画の続きを自宅のテレビで見るといったこともできます。「LISMO Wave」「LISMO unlimited」などKDDIの音楽サービスやゲームも楽しめます。

また、シニア層の生活を支えるネットショッピングや料理レシピなど生活系のコンテンツも揃っていますし、CATVならではのローカル情報にも力を入れています。

さらに、auスマートフォン向けアプリの中から適したものをピックアップして載せることも検討しており、月額390円でアプリが取り放題になる「auスマートパス」に加入していれば無料で利用できます。Google Playも搭載するので、今後スマートTVが普及したときに、対応アプリをダウンロードするとスマートフォンのように画面上に並ぶイメージです。

このように、STBでスマートTVの機能を補完することもできるようになると見ています。

――CATV事業者にとっても、顧客獲得などのメリットがありますね。

高橋 そうですね。当社は子会社のジュピターテレコム(J:COM)とジャパンケーブルネット(JCN)を筆頭に、全国92社(J:COM Phone プラス、ケーブルプラス電話による提携事業者、2012年6月末時点)のCATV事業者とリレーションがあります。ケーブルプラス電話に始まり、最近ではスマートフォンと固定通信のセット割引「auスマートバリュー」への対応、CATVのネットワークを活用したWi-Fiスポットの展開などで非常に近い関係にあります。

そこにSmart TV BOXが加わることで、より緊密な関係を築くことができます。これだけのサービスを安価な料金で提供すれば、CATV事業者の顧客獲得になりますし、我々も新しいビジネスを作ることができます。

CATVの加入者はテレビをつけてもSTBの電源は入れないことが課題となっています。その点、SmartTV BOXはテレビだけでなくさまざなコンテンツが画面に表示されるので、STBの電源を入れるきっかけになるはずです。

また、CATVはインターネット接続サービスへの移行も課題となっています。今すぐ全面的にシフトする必要はないけれど、多チャンネルを大事にしながら、インターネットのビジネスモデルを作らなければなりません。

日本でインターネットビジネスは回線数で語られますが、それよりも、FTTH上でインターネットの技術を使い、“バリュー”として提供できるかどうかが重要です。

我々はデジタルコンテンツばかり手がけてきましたが、若年層からシニア層まで幅広い年代を対象に、世の中に貢献するようなインターネットの方向性を提案していきます。

月刊テレコミュニケーション2012年8月号から再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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高橋誠(たかはし・まこと)氏

1984年3月横浜国立大学工学部金属工学科卒業。同年4月京セラ入社。同年6月第二電電企画(後、第二電電に社名変更)入社。2000年10月同社合併に伴い、KDDI・au商品企画本部グループリーダー。01年6月au商品企画本部モバイルインターネットビジネス部長。03年4月執行役員ソリューション事業本部コンテンツ本部長兼コンテンツ企画部長。07年6月取締役執行役員常務コンシューマ事業統轄本部長。2010年6月代表取締役執行役員専務グループ戦略統括本部長。2011年4月代表取締役執行役員専務新規事業統括本部長、現在に至る

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