――厳しい経済環境が続いていますが、ネットワークインテグレーション市場はどのような状況にありますか。
吉野 製造業を中心に投資が減少している状況は今も同じです。案件数は昨年度の下期と比べ、増えても減ってもいません。回復するのは今年度の下期ないしは来期と見ていましたから、その意味では予測通りです。
一方、今年度最大のリスク要因は価格競争だと理解していましたが、これについては想定を超えた事態が起きています。第2四半期以降、価格競争は非常に激化しました。
――どれくらい激しい値下げ競争が起こっているのですか。
吉野 お客様が予算化していた額を2~3割下回るというのは一般的です。それが3~4割カットになるのか、最悪のケースで半分かと5月頃には見ていました。ところが、他社の話ですが、2~3割カットが逆転し、2~3割で受注というケースが7~9月の間に数件あったと聞いています。お客様もびっくりのはずです。
――7~8割カットですか。それでは受注しても大赤字ですね。
吉野 利益面でいえば、明らかに赤字受注でしょう。我々の業態で最もコストが大きいのは人件費なのに、どうみても人件費をカバーすることはできません。緊急事態だから利益はさておき売上を伸ばすんだという論法でしょうが、困るのは業界自体が縮小しかねないこと。業界の健全な成長が損なわれれば、結果的にお客様も被害者になります。
運用管理者はコアか?
――大変な状況のようですが、ネットワン自体の業績は堅調ですね。第1四半期の連結決算も増収増益でした。7月には4つの事業戦略を発表し、今期の成長戦略を明確にしています。
吉野 事業戦略の1番目は「ネットワーク事業における差別化」です。ご承知の通り、ネットワンはネットワーク専業のインテグレーターとして今日まで来ました。そのため、お客様からはルーター/スイッチの物販とも見えてしまうのですね。新しいテクノロジーには先行者利益がありますが、最近は陳腐化も早く、それが得られるのは3年ぐらいです。だとすると、いつまでもお客様に製品をデリバリーするだけでは、売上は毎年下がっていきます。
では、どう差別化するのか。例えば、セキュリティが話題になって十数年が経ちます。ところが多くのインテグレーターはセキュリティのテクノロジーの話ばかりしていて、そのコンサルテーションや導入後の監査の話はしません。そこで1年前、ビジネスアシュアランスというセキュリティ監査の専門企業を設立しました。セキュリティ監査とネットワークインテグレーションが融合すれば、単なるインテグレーターにはない付加価値を提供できます。
――それはユニークな取り組みですね。事業戦略の2番目は「サービス事業の拡充」です。今後5年で全売上の50%までサービス事業の売上を高めるという目標を掲げています。
吉野 ユーザー企業のIT部門には運用管理者の方がいますが、これだけテクノロジーの複雑さが増していると、人もお金もどんどん膨らんでいきます。しかし今の時代、自社のコアビジネスに集中して投資したいですよね。だとすると「運用管理者はコアですかノンコアですか」と。そこで07年11月にエキスパートオペレーションセンター(XOC)を新設し、LAN/WANのリモート運用管理サービスを提供してきましたが、ここをもっと拡張しようと、昨年度から今年度にかけて、ユニファイドコミュニケーションとセキュリティのメニューを加え、内容の充実を図っています。今後さらにデータセンター周りのサーバーやストレージのリモート監視も追加する計画です。