分散型IDのユースケースは?
分散型IDのユースケースは、大きく次の2つに分けられるという。
1つめは、訪日観光客向けのデジタル証明だ。新型コロナウイルスが落ち着きを見せ、インバウンド需要も回復しているが、観光客が運転免許証を偽装してレンタカー等のサービスを利用する事件も多発している。
免税手続きやイベント入場時の本人確認など、サービスや施設予約の申し込みをデジタル証明書で完結させることができれば、観光客・サービス事業者双方の負担を軽減できるうえ、安全性も担保できる。
周遊ユースケース
DNPと三菱UFJ銀行は今年5月、分散型IDの相互接続を目的とした実証を、オーストラリアの金融機関やシステム開発企業とともに実施。米国際標準化団体「OpenID Foundation」にて策定されているデータ形式と通信プロトコルを使用することで、異なるフォーマットでデータを保持している日豪の企業間においても、相互接続が可能なことが確認できたという。これを踏まえ、オーストラリアからの移住者の銀行口座開設手続きや、観光客向けチケットの購入の効率化に関する実証に今後も取り組んでいくとのこと。
2つめは、外国人就労者の検証だ。近年、在留カードの偽装等による不法就労が増えており、不法就労者を雇用した事業主も処罰対象になる可能性がある。
分散型IDを活用し、在留カードなどの証明書を保管できる「外国人就労ウォレット」のようなアプリがあれば、企業側は安心して外国人就労者を雇用できる。就労者側も母国での転職活動などを行う際、同ウォレットで日本での実績を証明することが可能になる。
外国人就労ユースケース
岡本氏は、「現在は限定的な実証フェーズに留まっているが、来年には特定のユースケースが実装され、2026年以降に本格的な社会実装が始まっていくだろう」と展望した。