アイコムが開発・提供する無線機器は多岐にわたり、2016年1月に販売を開始したアマチュア無線用HFトランシーバー「IC-7300」の累計出荷台数は10万台を超える。
業務用無線機器についても、携帯電話回線を利用するIPトランシーバーや、免許不要で利用できる特定小電力トランシーバー、衛星通信トランシーバーなど、豊富なラインナップを取り揃える。「特に特定小電力トランシーバーは数が出ており、飲食店などでご利用いただいている」と和歌山アイコム 代表取締役社長の田中誠一郎氏は説明した。
和歌山アイコム 代表取締役社長 田中誠一郎氏
そのほか、無線LANアクセスポイント(AP)や海上・航空用無線機器なども用意。製品別に見ると、IPトランシーバーなどの陸上業務用が約半数を占め、次点にアマチュア用、海上用が続く。
品種別売上構成
アイコムは国内のみならず、約150カ国に自社製品を展開している。なかでも北中南米の売上比率が37.2%と高い割合を占める。EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)の売上比率は18.3%、アジア・オセアニアは16.2%だ(国内の売上比率は28.3%)。
有田工場に双腕ロボットを導入
ただ少子高齢化や若い世代の都市部への人口流出に伴い、地方に工場を構える製造業は今後人材確保が難しくなる。アイコムはこうした課題の解決に向け、すべての自社製品の開発を担う有田・紀の川両工場のスマートファクトリー化に取り組んでいる。
有田工場では、2023年3月期までに約9億円をつぎ込み、生産ラインに双腕ロボットなどを導入。全5ラインのうち、基板の製造工程と無線機器本体の組み立て工程の2ラインを完全ロボット化させている。
生産ラインに導入された安川電機製のロボット
ロボット以外にも、きびきびとした行動を作業員に意識付ける「10メートルを7秒以内で歩かないと警告音が鳴る廊下」や部品を運搬するAGV(無人搬送車)、機械稼働率を可視化するダッシュボードなど、様々な先端テクノロジーが導入されている。
操業開始時(1989年5月)から12万個以上の改善が“社員参加型”で行われているといい、「現在も235名の従業員全員が毎月1つ以上の改善策を提案している」(田中氏)とのことだ。