――通信事業者の情報システムは今、どんな課題に直面していますか。
クマー いろいろな課題がありますが、なかでも重要なのはユーザーの状況をリアルタイムに可視化できていないことだと思います。リアルタイムに把握できれば、ユーザーが不快な経験をする前に、通信事業者が問題を察知して解決することができます。また、次にどんなアクションをすべきなのか――より良い経営判断をできるようにもなるでしょう。
――日本の通信事業者の場合、具体的にどこが不十分ですか。
クマー 固定系と移動系に分けて説明しましょう。日本の固定通信事業者は、サービスごとに数多くのオーダーマネジメントシステムを抱えており、それらシステム同士のやりとりは非常に複雑怪奇です。そのため全体として何が起こっているかをまったく可視化できていません。
もちろん固定通信事業者の方は、こうした現状を認識されていると思います。しかし、固定通信は厳しいビジネス環境に置かれており、既存の情報システムの更改に多額の投資を行うのは難しいのが実情です。そこで注目してほしいのが、我々の「Order Visibility & Assurance」というソリューションです。既存システムを有効利用しながら、可視化を実現できます。
さらにCEO向けやカスタマーケア部門向けなど、役職や役割ごとに異なるリアルタイム情報を表示できるダッシュボード「Progress Control Tower」も用意しています。
膨大な情報からリアルタイムに重要な変化を察知
――移動通信事業者については、どうですか。
クマー 日本の移動通信事業者は非常に素晴らしいシステムをお持ちです。ただ、リアルタイムで情報は集まっているかもしれませんが、プロファイリングの点でまだ十分でないと感じています。
例えばキャリアショップに来られた顧客に料金やサービスの加入状況などを問われれば、リアルタイム情報をもとにすぐに回答することは可能でしょう。しかし、我々のいうリアルタイムはちょっと違うのです。
技術的な観点から説明しますと、1つはCEP(Complex Event Processing:複合イベント処理)です。CEPを活用すると、膨大な情報をリアルタイムに監視・分析し、重要な変化を逃さずに捉えることが可能です。今話題の「ビッグデータ」とまさに合致する技術ですが、まだ日本の事業者で採用しているところはないと思います。
また、もう1つ欠けているのが、重要な変化が発生した際に起こすアクションに関する判断を自動化するルールエンジンです。我々は昨年12月にルールエンジンのトップベンダーであるCorticon社を買収し、この分野を強化しました。
――リアルタイム情報を活用していくための仕組みがまだ足りないというわけですね。
クマー リアルタイム情報の活用方法の1つとして、「Situation Based Promotions」というソリューションも提供しています。これは、携帯電話の使用履歴やその顧客の趣味嗜好に合わせて、プロモーションやディスカウントなどを提供するものです。すでにトルコやイタリアの事業者などで採用されており、解約率の低下に貢献しています。