「M2Mのリアルな情報では、グーグルやアマゾン、フェイスブックといったアメリカのプラットフォーム事業者と同じ土俵で戦える可能性がある」
東京ビッグサイトで5月9日~11日に開催された「ワイヤレスM2M展」。その初日の特別講演に登壇した東京大学の森川博之教授は、M2Mは日本にとって「非常に大きなチャンス」になると語った。
M2Mで「面白いストーリー」の創出を
M2MとはMachine to Machineの略。多様なモノに取り付けられたセンサーデバイスとの通信など、モノとモノ、モノと人との通信を意味している。「今までのインターネットはコンピュータ、パソコンをつないできたが、これからはすべてがインターネットにつながっていく」(森川教授)。「Internet of Things(IoT:モノのインターネット)」や「Cyber Physical System」といったキーワードで、こうしたリアルの世界の様々なモノがネットワークにつながった世界が語られることも多い。
このM2Mが最近盛り上がりつつあるのは、1つは技術進化によって以前より容易にM2Mが実現可能になっているからだが、「技術の成熟化」という状況自体がM2Mへの期待を高めている側面もあるようだ。
「技術がだんだん成熟してくると、性能が少し上がっても、あまりインパクトがない。技術を何のために使うかが、今まで以上に重要になっている」と森川教授は研究開発の現状を解説したうえで、ベストセラー経営書の『ストーリーとしての競争戦略』を紹介し、ICTの世界でもこれからは「面白いストーリー」がポイントになると指摘。M2Mが成熟化した技術から「面白いストーリー」を創出するキーファクターになるとした。
M2Mプラットフォームを誰が握るかがカギ
また、冒頭で触れた通り、日本のICT業界にとって、M2Mは大事なチャンスでもある。M2Mは今から本格的に立ち上がる市場であり、「バーチャルなインターネット上の世界で戦おうと思っても、残念ながら5年、10年遅れてしまっているが、M2Mには大きな期待が持てる」からだ。
M2Mは「グーグルやアマゾンに対抗する軸になる」と森川教授 |
M2Mのシステムはこれまで企業毎、サービス毎に「垂直型」で構築されてきた。だが、森川教授によれば、PCなど他の市場でも過去多く起こってきたように、「水平型」への転換がM2Mにおいても始まろうとしているという。
この水平型モデルでは、M2Mサービスに必要な各種機能がクラウドサービスとしてM2Mプラットフォームから提供されるが、その結果としてM2Mプラットフォームには様々なモノから収集されたリアルな世界の情報が蓄積されることになる。最近、M2Mにはビッグデータの観点からも注目が集まっているが、それはM2Mプラットフォームに集まった大量のセンサー情報などを活用することで、従来できなかった新サービスが実現可能になると見られているからである。
M2Mの世界も「水平型」へ。覇権争いという観点では、大量のセンサー情報などが集約されるM2Mプラットフォームを誰が握るかがカギになる |
グーグルが検索エンジンを握ることでインターネットを制したように、M2Mプラットフォームを握ることでモノのインターネットの世界を制せるかもしれないのである。
(後編に続く)