大規模化を低コストで
エイネットは2009年、高画質なHD映像の配信が可能な新版「Fresh Voice HD」の販売を開始した。高画質化の進む専用端末型と遜色ないフルHD(1920×1080)画像の配信が可能なほか、各端末の性能や回線品質に合わせて最適化された映像データを配信する最新の映像符号化規格であるH.264/SVCを採用。通信環境が不安定な場合でも映像の途切れや乱れが発生しない点も特徴だ。
だが、代表取締役社長の西畑博功氏は、「HDは、いわばおまけ」と語る。本製品の肝は、SIPへの対応と、ソフトウェアMCU(多地点接続装置)機能を搭載していることだ。
「テレビ会議専用端末と相互接続して、性能も落とさずに通信できる。また、Fresh Voice HDサーバーを高価格な専用MCUの代わりに使えるので、大規模システムも従来に比べて圧倒的に低コストで構築できる。ポート単価で10分の1以下も可能だ」
エイネット代表取締役社長の西畑博功氏 |
テレビ会議システムのユーザーは、既存端末を有効活用しながら、さらにPC端末を用いて広範囲に映像コミュニケーションの利用シーンを広げられるようになる。携帯電話とも接続できるため、図表2のように会議室、自席PC、外出先や在宅環境からと多様な場面から会議への参加が可能だ。また、「操作性にも配慮し、相手先が専用端末でもPCでも違和感なく操作できるように作り込んでいる」(同氏)という。
図表2 「Fresh Voice HD」のシステム構成イメージ(クリックで拡大) |
「相互接続」が市場広げる
その狙い通り、現在、既存のテレビ会議端末、専用MCUとFresh Voice HDを接続し、120拠点に会議システムを展開する大型案件が進行中という。また、ゲートウェイを介した携帯電話からの会議参加、他社の会議システムと連携し企業間コラボレーションに活用するといった検討もなされており、「相互接続」をキーワードに顧客ターゲットを広げていこうという同社の狙いが、まもなく形になりそうだ。
西畑氏によれば、「出張費が減らせるなどのWeb会議のメリットはもう十分にお客様が理解している。確実に導入効果が見込めると理解して、最初から非常に具体的な問い合わせがくるケースが増えた」と、ユーザーもかなり成熟しているという。
そうした市場環境を追い風に、順調にユーザー数を伸ばしているWeb会議市場だが、反面、価格競争も進み、市場規模が伸び悩んでいるのも事実だ。そうしたなか、テレビ会議ユーザーの取り込みに注力するエイネットがどのような成果を出すのか、注目される。