情報通信研究機構(NICT)は、Beyond 5Gを見据えた様々な研究開発の成果を「ワイヤレスジャパン×WTP 2024」のブースで紹介している。
NTN相互の光通信でBeyond 5G実現へ
その1つが、大容量光通信基盤技術の研究だ。Beyond 5Gの超高速・大容量ネットワークの実現には、非地上系通信(NTN)の役割が重要になる。それには、静止軌道衛星(GEO)、低軌道衛星(LEO)、高高度プラットフォーム(HAPS)など、多様な方法がある。
NICTはこれらの相互の通信を可能にする光通信端末を開発している。装置は宇宙空間や空中で動作させるため、小型化する必要がある。そこで、高速、長距離、双方向リンクなど、必要な機能を盛り込んだフルトランシーバー(FX)と、機能を絞り込むことで小型・軽量化したシンプルトランスポンダー(ST)を開発。性能を維持しながら消費電力の低減も実現している。
宇宙空間・空中での光通信に用いるシンプルトランスポンダー
これにより、空中間の通信では100Gbps以上(HAPS相互の場合)、宇宙と地上(光地上局)との通信でも10Gbpsという速度を達成しているという。
HAPS接続に向け飛躍するドローン自律飛行技術
このような技術の将来的なユースケースとして特に有望なのが、ドローンの制御だ。HAPSとドローンを接続することにより、見通しが利かない場所での航行を高度化し、災害時での即時対応を目指す。
実証実験に用いたドローン実機
そうした応用も視野に入れ開発を進めているのが、920MHz帯の電波を利用した機体間通信システムを用いた位置情報共有技術(ドローンマッパー技術)だ。有人ヘリコプターやドローン同士が直接通信することにより、地上のオペレーターを介さずに自律飛行する。例えば、災害時等に飛行する有人ヘリでは、パイロットが周囲を飛行するドローンを把握することが困難であり、衝突事故につながる恐れがある。そこで、ヘリとドローンにこの技術を持つ通信機器を搭載しておけば、ヘリと一定距離に近付いたらドローンを自動着陸させるといった制御が可能になるという。
この技術により、複数のドローンを自動で追従飛行させることもできる。数台のドローンで荷物を運搬する際に有用だ。
また、169MHz帯と920MHz帯を切り替え、最大3ホップまでの中継により長距離かつ遅延時間を保証する通信が可能なコマンドホッパー技術では、山中で行った実証実験において全長3.9kmの距離でドローン制御に十分な電波を受信できたという。制御のために送受信するデータは軽量のコマンドテレメトリデータに限られるため、「理論的には10kmの通信が可能」(説明員)。
これらのほかにも、海中のロボットとのワイヤレス通信やそれを用いた測位を可能にする技術、AIによる映像データ認識と機械学習によって無人で電波強度を予測する技術や、低コストで高密度のIoT通信を可能にする「APCMA方式」を適用したデバイスなど、最先端研究が目白押しだ。