総務省 総合通信基盤局 電波部長 荻原直彦氏
――昨年11月にドバイで開かれたITU(国際電気通信連合)無線通信総会(RA-23)で、IMT-2030(6G)のフレームワーク勧告が承認されました。これが6Gの基本コンセプトになるのですね。
荻原 そうです。このフレームワーク勧告では、没入型コミュニケーション(Immersive Communication)やAIとコミュニケーションの統合(Integrated AI and Communication)など、6Gで想定される利用シナリオが議論され、それを実現するために必要な機能要件が記されています。
このうち、最高伝送速度や周波数利用効率、遅延、接続端末密度、信頼性といった5Gでも求められている能力については、6Gではさらに意欲的な数値が掲げられました。
加えて、5Gではあまり議論されていなかった新しい指標、例えば「測位精度」や「カバレッジ」、「センシング能力」といったものも6Gの指標として新たに位置づけられました。
また、このほかAI関連能力やサステナビリティについての議論もあります。いずれも6Gを実現していく上で重要な要素になります。
特に、通信機能の高度化に伴って消費電力が非常に大きくなりますので、これをいかに抑えるかが重要になります。その1つの解として、バックホールやコアネットワークの「光化」があります。
こうしたものを含めて、これから6Gの実用化に向けた議論が進んでいくことになるでしょう。
図表1 IMT-2030(6G)のユースケース
――日本では2020年から国策として6Gに向けた技術開発を支援しています。狙いはどこにあるのですか。
荻原 大きく2つあります。
情報通信は国民生活の利便性の向上に直結するインフラですので、最先端の技術を日本において可能な限り早期に円滑に導入して、生活の利便性や安全性を高めていきたいということです。
加えて、先端技術の研究開発や標準化で日本が世界をリードしていけるようにしたいと考えています。
日本の産業の拡大を考えた時、世界市場でのプレゼンスを高めていくことが重要です。これから全世界で6Gの恩恵を享受できるようにすると同時に、日本の産業も発展させていきたいと考えています。