天神地下街(福岡市中央区)は、九州最大の繁華街である天神の渡辺通り直下、地下鉄空港線天神駅から地下鉄七隈線天神南駅の間を含めた約600メートルにわたって南北に走る地下街であり、2011年9月10日に開業35周年を迎えた。
その記念事業の一環として、9月1日に地下街全体を無線LANエリア化し、「てんちかWi-Fi」の名称で来客の誰もが無料で利用できる公衆無線LANサービスを開始した。
天神地下街は、周辺のほとんどのショッピングビルや百貨店と連結し、地下鉄やバス等の交通拠点にも接続されており、1日平均40万人の通行量がある福岡最大の地下街だ |
公衆無線LANを集客に活用
きっかけは、国土交通省の2010年度モビリティサポートモデル事業に採択された交通弱者向けの地下街ナビゲーションの実証実験だった。
地下街を運営する福岡地下街開発、福岡の中心地域の無線LAN化を推進している「天神・大名地域WiFi化推進協議会」、無線LAN機器を提供するPicoCELA(ピコセラ)などが参画し、2011年1月~3月まで実施したもので、高齢者や車いす利用者などにスマートフォンを所持してもらい、無線LANアクセスポイントで利用者の現在位置を特定して、目的地までの階段や段差のないルートを画面に表示させて移動支援を行うものだった。実験終了後、商用化を睨んだ検討が進んでいるが、課題も多く、時間がかかっているという。
ただ、この時に敷設した無線LANアクセスポイントは生きていた。天神地下街では、35周年を迎えるに当たり、より多くの集客が見込めるサービスを模索しており、地下街ナビの実証実験もその一環だった。昨今のスマートフォンやタブレット端末等の無線LAN対応機器の急速な普及により、いつでもどこでもインターネットが利用できる環境が求められている。
また、天神地下街は、福岡空港から地下鉄1本でアクセスできる利便性から、国内だけでなく、海外からの観光客も多いことから、そうしたお客も手軽にインターネットを利用できる環境が必須と考え、公衆無線LANサービスの提供を決めた。