「病院の世紀」からの転換――。超高齢化社会を迎えた日本では今、医療の在り方が大きく変わろうとしている。医療法人社団プラタナス 桜新町アーバンクリニック院長の遠矢純一郎氏はその背景について、以下のように説明する。
「これまでの医療は、治癒が最大かつ唯一の目標だった。しかし、老衰がその最たる例だが、治せない病気はある。ガンも現代の医療をもってしてもなかなか治せない。にもかかわらず治癒を最大の目標においてしまうと、これだけ高齢化した我が国においては救われない方がたくさん出てくる」
では、これからの医療の目標とは何なのだろうか。遠矢氏の答えはこうだ。「病気や障害を持っていても、健やかに生活できること」。
この新しい目標において、中心となる舞台は病院ではない。それは普段の生活の場である自宅などだ。すなわち今起こっているのは、「在宅医療の世紀」への転換である。「余命1カ月と宣告された方が自宅に帰ってから元気になって、それから3年生きたといった例は数多くある。僕らは病院で大変な間違いをおかしてきた。在宅にはいろいろな治す力があると感じている」
そして、この在宅医療の本格化に向けて、大きな役割を期待されているのが実はスマートフォンなのである。「スマートフォンとクラウドが創る医療ICTの未来」をテーマにソフトバンクテレコムが2月3日に開催したイベントでの遠矢氏の講演から、スマートフォンなどのICTが医療の変革にどう貢献しているのかをレポートする。