宇宙探査機が惑星の引力を借りて推進力を得る手法のことを「スイングバイ」と呼ぶ。これになぞらえて、大企業の支援のもとで成長し上場することを「スイングバイIPO」と名付け、その実現を目指してきたのがソラコムとKDDIだ。
2014年創業のソラコムは、2017年にKDDIグループ入り。その後、「より高い成長をするためにIPOを目指してきた」と、代表取締役社長の玉川憲氏。2024年3月26日に東証グロース市場に新規上場し(日本取引所グループ「新規上場会社情報」ウェブサイト)、同日に開催した記者会見で「KDDIのほか日立製作所、ソニーグループ、セコムなどの出資をいただいて、今日のIPOに至った」とこれまでを振り返った。
ソラコム 代表取締役社長の玉川憲氏(左)と、記者会見にゲスト参加したKDDI 代表取締役社長の髙橋誠氏
ソラコムは、IoTプラットフォームを提供する会社だ。ユーザーである企業が「IoTサービスを簡単に作れる」ためのプラットフォームを国内外で展開している。
具体的には下図のように「IoTデバイス」と「IoTコネクティビティ」、そこから集められるデータを保管・分析する「クラウド」の3つを提供。ユーザーはこれを組み合わせることで「迅速かつ効率的にIoTサービスを構築できる」(玉川氏)。
ソラコムのIoT事業
ソラコムのビジネスモデル「IoT SaaS」とは
KDDIグループ入りした2017年当時、8万だった契約回線数は現在600万回線を突破。2024年3月期の業績予想は売上高80億円、5期連続で黒字の見込みだ。
ソラコムは自身のビジネスモデルを「IoT SaaS」と呼ぶ。「お客様は、WebサイトでIoTデバイスとSIMを数個買ってプロトタイプを創る。それが上手くいくと本番サービスが始まり、IoTデバイスとSIMが増え、リカーリング収益も伸びる。グローバル展開したいとなれば、さらにデバイス/SIM、リカーリング収益が増える。お客様のすべてのステージにおいてIoTデバイスとSIMが追加されるし、それによってリカーリング収益が積み重なる」
IoT向け回線(IoTコネクティビティ)やクラウドをサブスクリプションで利用するユーザーから得られる「リカーリング収益」の年平均成長率は32.7%だという。
IoT SaaSのビジネスモデル
また、ソラコムのプラットフォームに接続可能なエリアは180カ国・地域に及び、海外売上は全体の3分の1を超えている。
玉川氏は「創業後の第1章、KDDIグループに入ってからの第2章に続き、これからが第3章」と述べたうえで、これまで築いた土台を継続しつつ、「3つの成長ドライバー」でさらなる高みを目指すとした。