創薬や会話型コマースに生成AIを活用
フェーズ3に該当する各業界の取り組みも紹介された。
その1つが、製薬業界で進む「AI創薬」だ。富士通と理化学研究所は、大量の電子顕微鏡からタンパク質の構造変化を予測できるAI創薬技術を共同開発した。これにより、10倍以上高速にタンパク質の形態と構造変化の推定が可能になったという。
生成AIを活用した「AI創薬」
小売業界では、ユーザーのニーズやコンテキストを理解し提案する「会話型コマース」が頭角を現し始めている。Amazonは今年2月、生成AIを活用したショッピングアシスタント「Rufus」を発表した。例えば、「5歳の子どもにベストな恐竜のおもちゃは?」と質問すると、適切な回答と提案が返ってくる。
生成AIを活用した「会話型コマース」
生成AIを用いてリアルな動画像・音声などを作り出す「シンセティックメディア」の活用も、エンターテインメント領域で見られる。AIタレントを起用した伊藤園のテレビCMは話題を呼んだ。
生成AIを活用した「シンセティックメディア」
今後の生成AIのビジネス活用に関する展望は?
NRI DX基盤事業本部 IT基盤技術戦略室 エキスパートリサーチャーの鷺森崇氏は、今後の生成AIのビジネス活用について展望を示した。
まず鷺森氏は、生成AIの進展による「データサイエンスの“民主化”」を期待する。これまでは専門知識を持つ人だけが生成AIやデータを利用できたが、今後は誰もが気軽に生成AI・データを使えるようになるという。「生成AIが人の指示や意図を理解し、人とAIとの対話を補助するようになる」
また、生成AIが問題解決のためのアドバイスなど「ビジネスにおけるデジタルアシスタント」や、好みにあわせたコンテンツを推奨する「日常生活におけるデジタルコンシェルジュ」になると話した。
Microsoftは昨年9月、相互に対話してタスクを解決できるマルチエージェントフレームワーク「AutoGen」を公開しているが、「複数のAIエージェントに役割を持たせて、それぞれの立場でタスクを遂行することで、より高精度なタスク遂行も実現できるようになる」と鷺森氏は説明した。