<特集>光ファイバー新時代マイクロソフトも注目の「パワー1000倍」光ファイバー 空孔コアで限界突破 

光の最高性能を引き出すために内部構成を抜本的に変えた、新型ファイバーの実用化が見えてきた。慶應大と古河電工がタッグを組む「空孔コア光ファイバー」が、光ネットワークの限界を打ち破ろうとしている。

5G/6G網構築にも革新

3つめは、「光信号の波形が劣化しない」こと。慶應大 理工学部電気情報工学科の津田裕之教授は、「光伝送システムに大きな変化をもたらす」と話す。

現在の光ファイバー通信では光信号に歪みが生じることは避けられず、受信側のDSPで補正処理することで対処している。「それがある意味、伝送システムの性能限界を決めていた。空孔コアファイバーでは波形が全く劣化しないため、そうした元に戻す処理が不要になる」(同氏)

つまり、伝送システムの高性能化や低コスト化、そして低消費電力化をこれまで以上に追求できる可能性があるのだ。「これまで光ファイバーは、信号の劣化を前提に、電気を使って直すという考えだった。それを、きれいな信号を送って余計な電気を使わないという世界へと変えることができる」と武笠氏は説明する。

さらに、この特性の活用法として山中氏が期待するのが「アナログ信号をそのまま送る」使い方だ。無線信号を光ファイバーで伝送する「Radio on Fiber(RoF)」である。これも、5G/6Gネットワークの構築法を革新する可能性を秘める。

高周波数帯を用いる5G/6Gは、特に屋内でエリアを構築するにあたって多くの基地局設備/アンテナを使用する。4G以降は、RU(Radio Unit)から出される無線信号をいったんデジタルに変換し、複数の張り出しアンテナに分散させるDAS(Distributed Antenna System)も使われているが、無線信号自体を光ファイバーで分配するRoFが可能になれば、より効率的に壁の向こう側や隣の部屋へ電波を分配できるという。このシステムを研究している先端科学技術研究センター 研究員の岡本聡氏は、「5G/6Gでは多数のアンテナが必要。それをファイバーでつなげばいいと誰もが言うが、そのためのファイバーはまだ存在しない。これから引くなら、空孔コアファイバーには大きなチャンスだ」と展望する。

(左から)古河電気工業 研究開発本部 フォトニクス研究所 光線路開発部 光線路開発課 課長 主幹研究員の武笠和則氏、慶應義塾大学 理工学部の山中直明教授、津田裕之教授、慶應義塾大学 先端科学技術研究センター 研究員の岡本聡氏

(左から)古河電気工業 研究開発本部 フォトニクス研究所 光線路開発部 光線路開発課 課長 主幹研究員の武笠和則氏、慶應義塾大学 理工学部の山中直明教授、津田裕之教授、慶應義塾大学 先端科学技術研究センター 研究員の岡本聡氏

実用化でマイクロソフトに先行

空孔コアファイバーは実は新しいコンセプトではなく、数十年前から様々なメーカーが技術研究を進めてきた。現在も実用化に近いレベルで続けているのが、古河電工とそのグループ会社であるOFS、そして2022年にマイクロソフトが買収した英Lumenisityだ。「2社は諦めずに挑み続けた」(武笠氏)という意味で、現状は古河電工・OFSにとってチャンスであると同時に、ライバルがマイクロソフトの資金力を得ただけに正念場であるとも言える。

冒頭で述べたように、低遅延アプリ等での有効性を検証できる実環境を構築したことで、「アプリ屋や、ローカル5Gをやっている方々に使ってもらいながら実用化していくための準備ができた」と山中氏。マイクロソフトのLumenisity買収で空孔コアへの注目が世界的に高まっているのは間違いなく追い風だ。世界最先端の実証環境を武器に、日本発のユースケースの開拓・実証と量産化を目指す。

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