SPECIAL TOPICDCIからメトロ網へ活用領域が急拡大 シエナ流“プラガブル”の活かし方とは

ルーター/スイッチに挿入して大容量データ伝送を可能にする「プラガブル光トランシーバー」。DCI(データセンター間接続)で始まったその活用領域が広がり始めている。ただし、その実力を活かすには、長所・短所の見極めと、従来型光伝送装置との使い分けが肝になる。“光の専門家”であるシエナに要諦を聞いた。

大容量DCI構築の現場で近年、普及してきたのがプラガブル光トランシーバー(以下、プラガブル)だ。ルーターにこれを挿入することでトランスポンダー装置を代替し、大容量リンクを低コストに作れるからだ。

このトレンドをさらに後押ししているのが、DC/クラウド事業者や通信事業者から注目を集める標準規格「400ZR」と「OpenZR+」である(以下、合わせて400ZR/ZR+)。400G化のハードルを大きく下げられるため、この400ZR/ZR+に対応したプラガブルは既存ルーターでもすでに広く使われている。日本シエナコミュニケーションズの滝広眞利氏によれば、小型で扱いやすい「QSFP-DDの伝送出力パワーが上がったこと」がその契機となり、「活用領域がDCI以外にもどんどん広がっている」。

日本シエナコミュニケーションズ システムエンジニアリング本部 第1技術部 担当部長 滝広眞利氏

日本シエナコミュニケーションズ システムエンジニアリング本部 第1技術部 担当部長 滝広眞利氏

独自モードで長距離400G伝送 オープン化と“シエナらしさ”両立

シエナは、最大400Gbps伝送が可能な光伝送用チップセット「WaveLogic 5 Nano(WL5n)」を用いて、400ZR/ZR+対応プラガブルのラインナップも豊富に揃えている。

その活用領域を示したのが図表1だ。「パワーの問題が解決されたことで、ポイントツーポイント型のメトロだけでなく、ROADMにつなぐことも可能になった。将来的には、100G超の帯域が必要になるアクセスや長距離伝送にも使えるようになる」(滝広氏)。

図表1 WaveLogic 5 Nanoの主なユースケース

図表1 WaveLogic 5 Nanoの主なユースケース

ここで1つ、疑問が湧く。400ZR/ZR+は標準規格だ。その普及によってメーカー間の差はなくなり、今後は“どれを選んでも同じ”になっていくのか。

結論は否である。シエナは、市場拡大をもたらす標準化を推進するのと並行して、独自モードの追加によって幅広いニーズに応えている。

図表2は、標準規格のOpenZR+と、長距離伝送が可能なシエナ独自モード「PKT-MAX」の比較だ。伝送可能なパス(青)のうち、OpenZR+(灰色)とPKT-MAX(赤)がサポート可能なパス数を示している。短・中距離では差はないが、500kmを超えるとその違いは歴然。OpenZR+では対応できない1000km超の長距離伝送も、PKT-MAXならサポートできる。

図表2 OpenZR+とPKT-MAXのパスサポート数

図表2 OpenZR+とPKT-MAXのパスサポート数

これなら、他社システムとの混在環境においては400ZR/ZR+の標準モードを使用しつつ、500kmを超える長距離伝送が必要な場所でシエナ独自モードを活用するという柔軟な運用が可能になる。プラガブルのメリットを活かせる領域が確実に広がるはずだ。

加えて、ユーザーにとって朗報と言えるのが、シエナがプラガブルの販売戦略に新たな方向性を示したことだ。「これからは、他社ルーター/スイッチ向けにもプラガブルを売る」と滝広氏。他社ルーターを使用するユーザーも、高性能なシエナ製プラガブルを用いてIP/オプティカル統合を目指す道が拓けるというわけだ。実際、日本でも「ユーザー主導で、他社ルーターとシエナのプラガブルをつないだ評価・検証を始めている」。現状はメトロ網が主戦場だが、「これから大容量化が求められるアクセスにも広げていきたい」という。

また、プラガブルにはルーターに挿すだけでなく、トランスポンダーに挿して使うという利用法もある。従来型のトランスポンダーに比べて低コストかつ消費電力も下げられるため、「メトロ向けの次世代機では、従来のようなオンボード型ではなくプラガブルなものが増えてきている」。これも、メトロ網構築の有力な選択肢となろう。

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