時刻同期が産業・社会DXを支える PTP活用領域が5G網から製造業・電力へ拡大

4G/5G通信を裏方で支える時刻同期技術が今、製造業や電力など産業・社会インフラへと活用領域を広げ始めた。あらゆる産業のDX化において、キー技術となり得る「PTP」の現状と進化をレポートする。

時刻同期

写真:Madmaxer / iStock

時計がズレたり、時刻がわからなくなったりすると途端に立ち行かなくなるのが人間社会だ。私たちの生活を支える社会・産業システムは、時刻の共有によって成り立っている。

この「時刻同期」に求められる厳密さは、システムによって異なる。特に高い精度が求められるシステムの代表例が、モバイル通信だ。

5Gネットワークの基地局同士は、無線フレームの送出タイミングを正確に合わせることで電波干渉を防いでいる。そこで許される誤差は、UTC(協定世界時)に対して±1.5マイクロ秒(μs)以内。100万分の1秒レベルで時刻を合わせているのだ。

さらに、5Gネットワーク内でこの高精度を実現するためには、時刻情報を取得して配信する時刻基準装置(PRTC)にナノ秒(ns)レベルの精度が必要だ。国際標準化機関のITU-Tが規定する基準PRTC-Bの許容時刻誤差は40ns以内だ。

広がるPTPの活用領域

こうしたマイクロ/ナノ秒レベルの時刻同期を実現する技術が、PTP(Precision Time Protocol)だ。

I Pネットワーク上で時刻情報を取得・配信するプロトコルとしては、誤差数ミリ秒以下の時刻同期が可能なNTP(Network Time Protocol)が長年使われてきた。NTPとPTPは共にデータパケットにタイムスタンプ(時刻情報)を載せて受け渡す仕組みだが、PTPはNTPとは桁違いの高精度同期が可能だ(図表1)。

図表1 時刻同期技術と精度、ユースケース

図表1 時刻同期技術と精度、ユースケース

このPTPが最も活用されているのが通信業界である。5Gに比べると要求精度は低いものの、4GでもPTP技術が使われている。また、通信ネットワークを介するクラウドサービスの普及や、データセンター(DC)間でのデータ/アプリケーション連携が広がるほどにPTPの活用範囲は広がっている。代表的なユースケースが、金融システムや放送システムだ。

金融業界では、各地のDC・取引所間でミリ秒からマイクロ秒単位の正確な時刻情報を共有する必要がある。厳格なリアルタイム性が要求される放送やライブ配信等の現場も同様だ。

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