顧客ニーズに応じた柔軟構成 コンパクトさと高機能を両立
Athonetソリューションは機能別のソフトウェア群からなるが、顧客のビジネス規模や用途に応じてハードウェアを含めたトータルソリューションも提供する(図表1)。
図表1 Athonet Private Network
ハードウェア構成として最も標準的なのが「Unified Network Platform」だ。ラック型のマシンで、PoCなら1台、商用では複数台を用いた冗長構成を取れる。複数の拠点に渡って冗長性を確保するジオリダンダンシーにも対応する。
そして、パブリッククラウドでの運用も可能だ。Google Cloud、AWSといった大手クラウドでの商用実績がすでにあるほか、HPEが提供するGreenLakeにも今後対応していく。
ユニークなのが「Tactical Network」シリーズだ。バックパックや高さ90cm程度のキューブ型筐体にコアネットワークに加え、無線基地局、アンテナ、バッテリーなどを格納し、高い機動性を持たせている。軍事・治安維持などの特殊なニーズに向けて開発されたが、イベントや災害時など、一時的なローカル5G運用にも活用できる。
ローカル5Gをさらに気軽に導入できるように、コア、基地局に加え、対応スマートフォンやSIMまでをセットにしたスターターキットもラインナップしている(日本での提供は準備中)。
ソフトウェアの中心となるのが「Athonet 5G Core」だ。「Athonetの5Gコアは、コンパクトでありながら5Gの機能が充実している点と、データ通信だけでなく音声サービスも使用できることが特徴」と阿久津氏は述べる。
5Gを活かすQoS、スライシングといった機能をもちろんサポートするほか、ユーザープレーンのパフォーマンスの高さと柔軟性も長所だという。「eBPF(extended Berkeley Packet Filter)というLinuxの機能を用いて、OSのカーネルレベルで通信の制御を行うカスタマイズをしています」(阿久津氏)。
接続するRANを選ばないこともAthonetの大きな特徴だ。「屋内用、屋外用や、URLLCを提供するRANなど、用途に応じたRANとAthonetコアを提供できます」(阿久津氏)。すでにエリクソン、ノキア、エアースパンなどのRANと世界中で商用の接続実績がある。
音声サービスとしては、IMS(IP Multimedia Subsystem)を使ったVoLTEに加え、VoNR(Voice over New Radio)による通話も提供する。また、通話のほか、転送やSMSなど“スマホ同等”の機能も利用できる。さらに耐障害性も高く、サイト間冗長にも対応する。
実際、欧州を始め製造業、鉱業、運送業などの産業50社以上が、IMSを採用しているという。パッケージを導入するだけで高品質な通話が利用できる点が評価されている。
MCPTT(Mission Critical Push to Talk)も特徴的だ。高い信頼性が要求される場面で複数人の通話手段として活用できる。このような音声サービスをサポートするコンパクトコアは珍しく、他社との差別化ポイントになっている。
そして、今年リリース予定の最新のバージョンでは5Gコアに4Gコアが統合され、1つのコアで両方の機能が提供できるようになる。同社 コミュニケーションテクノロジー事業本部 テクニカルプリセールス本部 ソリューションアーキテクトの吉川慎二氏は「例えば、コア1台で免許が必要なローカル5Gと、アンライセンスのsXGPの両方を使うことが可能です」と話し、オフィスや工場、あるいは避難所などでの用途を見込んでいる。
ヒューレット・パッカードエンタープライズ コミュニケーションテクノロジー事業本部
テクニカルプリセールス本部 ソリューションアーキテクト 吉川慎二氏
活躍の場を広げるAthonet Wi-Fiと同一UIで管理へ
このような高い性能を背景に、Athonetのローカル5Gは活躍の場を広げている(図表2)。多くの来場者のあるスタジアムやイベント会場では、スタッフ同士のコミュニケーションや外部への通信に広く利用されている。広大な敷地を持つ空港での採用例もある。5Gによって映像を送ることができるので、位置情報と組み合わせた航空機整備業務の効率化などの新しいユースケースが出てきているという。「だだっ広い敷地に電波を張り巡らせるのが、ローカル5Gならではの使い方」(同社 コミュニケーションテクノロジー事業本部 テクニカルプリセールス本部 ソリューションアーキテクトの中山雅文氏)。
図表2 ローカル5G利用シーン
ヒューレット・パッカードエンタープライズ コミュニケーションテクノロジー事業本部
テクニカルプリセールス本部 ソリューションアーキテクト 中山雅文氏
また、港湾ではクレーンをリモート操作したり、貨物に事故が起きた場合の映像を保険申請のエビデンスに用いている。主に防衛分野で利用されるTacticalシリーズは、Starlinkと組み合わせて南極で活用される例もある。
こうしたポテンシャルを十分に発揮するために、Athonetではシンプルな管理画面を用意している。すべてのネットワークファンクションが1つの画面で閲覧可能であり、エンドユーザーが直接操作することを想定した設計になっている。統計情報やメトリクス、ログやアラートも見やすくデザインされている。
HPEはWi-Fiをクラウドで管理するソリューション「Aruba Central」を持つ。これにAthonetの管理機能を統合し、Wi-Fiと同一のUIでローカル5Gを管理できるようにする取り組みが進んでいる。ローカル5GをWi-Fi感覚で扱えるようになり、導入ハードルを下げることになるだろう。
高機能、使いやすさ、低コストを併せ持つAthonetが、ローカル5Gの可能性を広げていく。
<お問い合わせ先>
ヒューレット・パッカード エンタープライズ(HPE)
E-mail:JPN_CTG_EVENT@hpe.com
TEL:0120-268-186
URL:https://www.hpe.com/jp/ja/solutions/communications-industry-transformation.html