ソフトバンクのスマートビル構想 データが連携し、自律するビルへ

スタジアムや複合ビルなどをスマート化し、業務効率化やエネルギー問題などの解決に挑むソフトバンク。あらゆるデータが連携し、ビルが“自律”することで拓かれる未来とは。

IoTやAIなどのデジタル技術の進展に伴い、建物をスマート化する動きが活性化している。調査会社のパノラマデータインサイトによると、2022年の世界スマートビル市場規模は約11兆円に及び、その後2023年~2031年のCAGR(年間平均成長率)は11.3%で成長。2031年には約29兆円に到達すると予測されている。

「海外と比べると日本のビルのスマート化は遅れ気味だったが、近年は政府主導のガイドライン策定などもあり、スマートビルを推進していこうという動きが加速し始めた」。そう話すのは、ソフトバンク 法人事業統括 デジタルトランスフォーメーション本部 スマートシティ事業統括部 スマートシティ事業推進2部 部長の沼田周氏だ。

ソフトバンク 法人事業統括 デジタルトランス フォーメーション本部 スマートシティ事業統括部 スマートシティ事業推進2部 部長 沼田周氏

ソフトバンク 法人事業統括 デジタルトランス フォーメーション本部
スマートシティ事業統括部 スマートシティ事業推進2部 部長 沼田周氏

従来のビルには、非効率な部分が多い。例えば、ビルの警備や清掃を複数ビル間で包括的に実施できれば効率化につながるが、ビルによってオーナーが異なるため、「隣り合ったビルでも協調的な運用ができない」と沼田氏は指摘する。

ビルがIoT化されていないと、人の動きも掴めない。特に公共施設や商業施設にとって、来訪者数をリアルタイムで捉えることは、マーケティング用途はもちろん、施設の混雑状況を適切にコントロールするといった来訪者の安全管理面でも必要不可欠だ。また、人流を把握できていないがゆえ、ビル内に人がいないにもかかわらず空調が稼働していて、エネルギーの無駄が生じているケースも散見される。当然建物は経年劣化に伴い資産価値が低下していくため、バリューアップという観点でもスマート化は重要である。

スマートビルでCS向上

このビルのスマート化にいち早く取り組んできたのが、ソフトバンクだ。同社が本社を構える東京ポートシティ竹芝において構築したデータ連携基盤「Smart City Platform」を活用し、千代田区にある複合ビル「九段会館テラス」のスマート化に着手している。職域食堂やテラスにIoTカメラを設置し、ビルマネジメントの業務負担軽減やセキュリティ向上に寄与する取り組みだ。また、施設内のサイネージやホームページ上で混雑状況をリアルタイムで配信し、来館者の満足度アップにつなげたという。

ソフトバンクは、スタジアムのスマート化にも着手した。具体的には、通販大手のジャパネットと長崎スタジアムシティのスマート化に取り組む。「自由視点のような新しい観戦体験を提供していきたい。まず第1のスマート化として、高速通信が使えるスタジアムづくりを進めている」と沼田氏は話す。東京ポートシティ竹芝のスマート化で培ったノウハウを活かし、警備体制の効率化や混雑緩和ソリューションなども検討中だという。

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