NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)の主力事業の1つであるセキュリティ事業。しかし、セキュリティ専門の事業部の立ち上げから中心的役割を担ってきた福井将樹によれば、最初からうまくいったわけではない。福井はNTT-ATのセキュリティ事業の強みをどう作ってきたのか。<トラスト(信頼)>あるデジタル社会の実現を目指して挑戦する、NTTグループの上級セキュリティ人材を紹介する連載「<サイバーセキュリティ戦記>NTTグループのプロフェッショナルたち」。第11回に登場するのは、NTT-ATで、セキュリティ事業本部 セキュリティ事業開拓ビジネスユニット ビジネスユニット長 セキュリティエバンジェリストを務める福井将樹だ。
「最初は“半分”当たっただけ」
NTTの研究所からNTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)へ転籍して数年。福井将樹は社長に直訴して、セキュリティ専門の事業部を立ち上げた。
福井は、セキュリティ畑を長年歩んできたわけではない。大学では光信号処理を学び、NTTに入社すると研究所に配属。WDM(光波長多重通信)、IPネットワーク、NFV(ネットワーク機能の仮想化)など、その時々の最先端技術の研究開発に携わってきた。セキュリティについては「ネットワーク設計の一環として考えてきたくらい」だったという。
転機の1つのきっかけになったのは、研究所からNTT東日本へ出向していたときの経験だ。「法人向けネットワークサービスの実用化などが仕事だったのですが、『お客様の課題をもっと直接解決できる仕事の方が自分には向いている』――。そう感じたんですね」。その思いは、研究所に戻った後も消えなかった。
そこで法人ビジネスに携われるNTT-ATへの転籍を希望。念願叶ってネットワークインテグレーション関連のビジネスユニットを任されたが、成熟市場ということもあって「あまり伸びませんでした」。
そうしたなか、福井が着目したのがセキュリティだった。「当時は今ほど騒がれていませんでしたが、それでもお客様対応をしていると、セキュリティで困られているお客様が非常に多くいたのです」
福井が率いていたビジネスユニットの中には、小規模ながらセキュリティに関するチームがあった。また、NTT-ATは、NTTグループのCSIRTであるNTT-CERTへの協力を以前から行っており、高度なセキュリティ人材とセキュリティ技術もあった。
「これらをベースに拡大していけば、セキュリティに関するお客様のいろいろな困りごとを解決できると考えました」
そして社長にセキュリティ専門の事業部の立ち上げを直訴した福井。1年目の成果として約束したのは、自治体情報セキュリティクラウド向けSOCサービスの受注数だ。
「『5件獲ります』と宣言して始めたのに、結局3件しか取れず、社長には『約束と違うじゃないか』と(笑)。赤字ではなかったですけど、立ち上げ当初はカツカツでした」
最初の約束は約“半分”しか果たせなかったものの、その代わりに分かったこともあった。「後発の我々が、先行するセキュリティ専業の事業者などと同じことをやっても駄目です」
直訴からおよそ7年。NTT-ATのセキュリティ事業は、今では主力事業の1つへと育っている。