<連載>IoT最新事情(第1回)生成AIはIoTを変えるか ChatGPTとリアル世界が出会う

ChatGPTを使ってIoTデータを分析しようとする取り組みが始まった。それは、実世界を写すIoTデータと生成AIの出会いを意味する。ChatGPT登場時を超えるインパクトを我々の生活にもたらす可能性がある。

「AIに聞く」から分析開始

下の画像は、SORACOM Harvest Data Intelligenceの使用例だ。「時系列データからどんなインサイトを引き出すのか。そのプロンプトまで用意した」(松下氏)のが特徴である。ダッシュボード画面の「AIに聞く」ボタンを押すと、生成AIへの質問案が表示される。例えば「データについて説明してください」「データになにか特筆すべき箇所や傾向、異常値はありますか?」を選ぶと、データを分析するために役立つ情報を教えてくれる。「このデータを監視する場合の、しきい値のおすすめは?」を選び、具体的な設定値を提案してもらうことも可能だ。

SORACOM Harvest DataIntelligenceの使用例

SORACOM Harvest DataIntelligenceの使用例。「AIに聞く」ボタンを押すと表示される選択肢を選ぶと、その回答が表示される。プロンプトを理解している人なら自由入力も可能だ

命令を自由入力することもできるが、IoTデータをChatGPTに分析させ、ChatGPTから適切な情報を引き出すには専門技術が必要だ。そこで、選択肢をあらかじめ用意することで誰にでも生成AIを使いやすいようにした。

顧客企業の反応はすこぶる良好で、「非常に面白く使っていただいている」。松下氏はそうしたユーザー発のアイデアが、IoTと生成AIの連携を発展させる土台になると期待する。「プロンプトの自由入力を用意しているのも、そのためだ。生成AIの使い方についてのお客様からのフィードバックを、AI開発力を持つ松尾研究所と一緒に具体化していきたい」という。

SORACOM Harvest Data Intelligenceで、位置情報付きの時系列データについての説明を求めたケース

SORACOM Harvest Data Intelligenceで、位置情報付きの時系列データについての説明を求めたケース。緯度経度情報から、「東京都内」という場所も推測して回答している

可視化より情報共有が大事

2014年にシリコンバレーで創業し、IoTプラットフォーム「BizStack」をはじめとするサービスを30社超に提供するスタートアップ、MODEもこの6月、BizStackのUI(ユーザーインターフェース)に対話型生成AIを追加した。生成AIを操作インターフェースとして用いることで、実空間に関する状況報告や異変の通知等をチャットボットを介して自然言語で行えるようにするものだ(図表)。

図表 BizStack AIの利用イメージ

図表 BizStack AIの利用イメージ

 

チャットボットで情報を引き出せるBizStack AIの使用例

チャットボットで情報を引き出せるBizStack AIの使用例。Slack等のチャット上で異変を報告し、質問に応じて追加情報も提供する

MODEはリコーや西松建設、パナソニックなど多くの日本企業を顧客に持つ。Co-founder兼CEOの上田学氏によれば、多くの顧客からBizStack AIを「すぐ試したい」という反応が返ってきているという。

生成AIを使う発端も、顧客からの要望だった。

BizStackのユーザーには工事現場や建設現場等が多く、MODEの少なくない営業社員がヘルメットを持ち歩くほど。当然、PCの前にはいないユーザーが大半で、情報量の多いダッシュボード画面は使えない環境にある。

現場でも使えるスマートフォン向けのUIを検討していたところ、登場したのが生成AIだった。「グラフ等を無理やり小さくするのではなく、その情報を要約して言葉で伝えたほうが現場では役に立つ。情報が見えることより『情報共有のほうが大事なんだよ』とお客様に言われ、みんながリアルタイムで見ているチャットに自然言語で情報を流してあげればいいと気づいた」(上田氏)。

BizStack AIでは、対話形式で「もっとこの情報がほしい」とリクエストすると、チャットボットがデータベースから取ってきてグラフ込みで説明してくれる。例えばオフィスの温度監視なら、「先週からの気温はどうなってる?」と聞くと、グラフとともに最低/最高気温、平均値・中央値を即座に表示する。ポンプの稼働監視なら、いつも見ているチャットに「停止してから◯分経過した」と連絡が来て、「どのポンプ?」と返すとマップで位置を教えてくれる。

上田氏によれば、このチャットボットとのやり取りは、人間が出した質問を「その意図は何か、何をすればよいのかを考えなさいという命令に作り直してChatGPTに与える」ことで実現している。返ってきた答えに対して、BizStack側で必要なシステム/データを参照しチャットボットが回答するという仕組みだ。こうすることで、「先週からの気温ってどうなってんの」といった曖昧な質問でも適切な回答が得られるようにしている。この場合は、質問されたオフィスにセンサーがついているかをロボットが調べた後、その温度データを1週間分取得してグラフを作るという命令を出す。

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