携帯電話加入者の拡大が頭打ちとなり音声ARPUも減少に転じるなか、いかにしてデータ通信分野での収益を拡大するかは、携帯電話キャリアの大きな経営課題となってきている。
世界最大のモバイルインフラベンダーであるエリクソンにとっても、スマートフォン/タブレットの本格普及に対応できる高速・大容量インフラを効率的に構築できるソリューションの提供とともに、そのインフラの上で収益を上げる仕組みを提案することが重要なミッションとなっている。これを可能にするソリューションとして、今同社が特に力を入れている分野の1つが、M2M(Machine to Machine)だ。
M2Mは、人の手を介すことなく、家電や産業用機械、各種センサーなどのデバイスとセンター側(あるいはクラウド)のコンピューターを接続して通信を行うシステムの総称である。
M2Mのアプリケーションとしては、例えば水道やガス等の遠隔検針が早くから利用されている。最近では、モバイル回線の利用が進んだことで自動販売機の販売管理や電気自動車の運用管理、デジタルサイネージへのコンテンツの配信など、その活用領域が大きく広がってきている。
将来的には、家庭の電力利用状況をリアルタイムに把握し、需給バランスに合わせて送電網を柔軟に制御するスマートグリッドなどの多様な分野で利用されることが期待されている。
エリクソンでは、2020年までに500億のデバイスがモバイルネットワークに接続されるという予測を明らかにしているが、その相当部分を占めるのが、こうしたM2M関連のデバイスなのだ。
網機能をまとめて提供
このM2Mの普及を加速させるソリューションとして、エリクソンが開発を進めているのが「Ericsson Device Connection Platform(EDCP)」と呼ばれるサービスプラットフォームだ。
EDCPは、M2Mアプリケーションで使われることが多い網機能(位置情報、接続品質制御、プレゼンス、メッセージングなど)をまとめて提供できる仕組みを持つ。これらの機能はAPIを介して、実際にサービスを行う事業者がM2Mシステムに組み込むことができる。通信キャリアが、このプラットフォームを導入すれば、企業やサービス提供会社は高度なM2Mシステムを容易に構築できるようになるのだ(図表)。
図表 M2Mビジネスの機能モデルとEDCPの提供領域 |
なお、EDCPは厳密な意味でのM2Mアプリケーションだけでなく、ゲーム機へのアプリ配信や電子書籍端末へのコンテンツ配信など、「人が利用する」ものにも使える。本稿では、こうした用途も含めてM2Mという言葉を用いる。