「この業者では埒があかない」――なぜ西川口病院は電話をIP化したのか

「皆、内線電話を使わなくなっていた」。院内を始終移動するスタッフのコミュニケーションに課題を抱えていた西川口病院(埼玉県川口市)は、電話システムをIP化するとともにFMCソリューションを導入した。

「他に拠点もないのに、電話をIP化して何のメリットがあるのか」

柿沼氏が相談したディーラーの反応は、そのようなものだったという。コミュニケーションツールの1つとして音声通話を捉え、その活用法を模索する柿沼氏が、“拠点間内線による通話料削減”のレベルでしかIP化のメリットを捉えきれないディーラーに、埋めきれない溝を感じたのも当然だろう。

「その業者でもIP-PBXの導入はできただろうが、『なぜIPにするのか』というレベルから話を進めていく気にはなれなかった」

当時をそう振り返る柿沼氏は、自らいくつかのシステムを検討し、アジルネットワークスが2008年11月から提供を開始した「アジルケータイセントレックス」に着目した。その特徴は、内線番号と携帯電話番号を紐づけることで3G携帯電話を内線電話機として取り込み、かつ携帯電話同士、固定・携帯電話間での保留/転送、グループ着信などができる点だ。定額通話サービスを使えば、内線通話はすべて無料化できる。

端末の移設・追加も容易で、固定電話機はSIP端末をLANにつなぎ、携帯電話はショップで端末を調達してユーザー自身がWeb画面上で登録設定を行うことで増設できる。

既存のPBXにアジルケータイセントレックスサーバーを接続し、これらの機能をアドオンすることも可能だが、西川口病院ではサーバー内にIP-PBX機能を内蔵し、新たにフルIPシステムを構築した。ソフトバンクの「おとくライン」と、携帯電話の通話定額サービス「ホワイト法人24」を採用し、携帯同士、固定-携帯間の通話料も定額化。図表に示した新電話システムを2009年1月末から稼動させた。

図表 「アジルケータイセントレックス」による新電話システム
「アジルケータイセントレックス」による新電話システム

CRM導入も視野に

稼動開始から間もない現在は、固定電話機と携帯電話が5台ずつという小規模なシステムで運用している。柿沼氏は「携帯電話を使えば、もっと円滑に業務を進められるという意識付けをしていきたい」と話す。職員が馴染むのに合わせて、徐々に携帯の台数を増やす予定だ。ナースステーションから看護師に遠隔で指示を送ったり、医師や看護師の緊急呼び出しを行ったりと、台数の拡充で用途は確実に広がりそうだ。

また、IP化の効果をより具体的に発揮するため、基幹系・情報系システムとの連動を図ることも今後の課題だ。

「一部の大病院がICT環境の充実に注力しているのを除けば、医療業界は非常に遅れている。そもそも生産性の低い業界であり、IT化は絶対に必要」と柿沼氏。「患者のデータベースや電子カルテと連動したCRMなど、マーケティング要素も加えながら拡充していきたい」と展望を語っている。

月刊テレコミュニケーション2009年5月号から転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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