米国ではすでに大手4キャリアが3LMを採用
Androidの魅力の1つは、自由にアプリを開発・配布できることだが、これは「言い換えれば、マルウェアも容易に開発できる環境にある」(牧氏)ということだ。アップルのApp Storeと違って、Android Marketではセキュリティ面での審査も行われない。
その一方でAndroidは、ユーザーがインストール時にアプリの権限を確認・承認することで、セキュリティを担保する仕組みとなっている。ただし、これは言ってみれば「自己責任」。企業のIT管理者にすれば、ユーザーの自己責任では困ってしまう。
そこで各社のMDMでは、IT管理者がアプリのインストールなどを制限できる機能を提供している。KDDI 3LM Securityも同様だが、このアプリ管理機能においても、OS改修により他にはない機能を実現している。例えば、インストール済みのアプリの無効化だったり、エンドユーザー側でアプリの権限を承認しても業務データへのアクセスは無効にすることなども可能だという。
アプリ管理の機能も充実するほか、3LM独自のVPNも提供 |
このように従来のAndroid向けセキュリティ管理ソリューションにはなかった機能を搭載するKDDI 3LM Securityだが、もう1つ重要な点は、KDDIのAndroid端末だけとはなるものの、一貫したセキュリティ管理が可能になることだ。
ハード・ソフト一体のiPhone/iPadやBlackBerryと異なり、Androidの場合は様々なメーカーから様々な端末が発売されている。各社はそれぞれ独自のカスタマイズを行っているため、通常のMDMなどの場合、A社のX端末は全機能に対応するが、B社のY端末は一部未対応の機能があるなど、バラバラの対応状況になってしまっている。こうした現状に対して、企業向けAndroidセキュリティの“スタンダード”を提供することが、3LM社のそもそもの目的だ。3LMフレームワークを搭載したAndroid端末であれば、メーカーが違っても一貫したセキュリティ管理が可能になる。
前述の通り、KDDIでは秋以降、すべてのAndroid端末を3LMフレームワークに対応させる予定だ。また、3LM社CEOのトム・モス氏によれば、米国では大手キャリア4社すべてが3LM社のフレームワークを採用しており、すでに数百万台の対応端末が存在。「年末には数千万台に広がる」見込みとのことだ。Android端末メーカーとの提携も進んでおり、現在、HTC、シャープ、モトローラ、パンテック、ソニー・エリクソン、NECカシオなど12社と協業しているという。
なお、国内の他のキャリアとの提携の可能性についてモス氏は「今はKDDIと100%集中している」とコメント。日本では当面、KDDI限定のサービスとなるようだ。牧氏はKDDI 3LM Securityについて「BlackBerryより優れている」と自信を見せたが、KDDIにとっては重要な差別化要因になりそうだ。
米3LM社CEOのトム・モス氏。3LM社の創業前は、グーグルでAndroidを担当していた |
KDDI 3LM Securityの提供形態については、企業側に専用サーバーを設置する「アドバンスドプラン」と、専用サーバーが不要なASP型の「ベーシックプラン」(ともに仮称)の2つのプランが用意される。アドバンスドプランでは3LM独自のVPN通信機能も提供。料金は改めて発表するという。
宅内設置型の「アドバンスドプラン」とASP型の「ベーシックプラン」の2種類を用意 |