韓国チェジュ島で進む大規模スマートグリッド実験(前編)――5万人の新規雇用と7兆円の内需を創出

イ・ミョンバク大統領の強力なリーダーシップの下、済州島(チェジュ島)で大規模なスマートグリッドの実証実験を進めている韓国。今回から2回にわたって、韓国のスマートグリッドへの取り組みをレポートする。

5つの重点分野とロードマップ

韓国政府は低炭素化社会に実現に向けて、以下の5つの重点分野を設定し、それぞれロードマップを掲げている(図表)。

図表 韓国のスマートグリッドの5つの重点分野とロードマップ
<第1段階>
技術検証期間
(2010~2012)
<第2段階>
消費者への周知期間
(2013~2020)
<第3段階>
スマートグリッド全国導入期間
(2021~2030)
スマートパワーグリッド ・デジタル変電技術検証
・インテリジェント配電盤
・送電設備監視、診断技術検証
・広域系リアルタイム監視制御
・分散電源、キャパシタの配電系連携試験
・統合スマートグリッド網の完成、運用開始
スマートプレース ・インテリジェントホーム電力管理
・消費者の選択できる料金制度の検討
・インテリジェントビル・工場電力管理
・消費者の自家発電奨励
・ゼロエミッションハウス・ビルの完成
スマートトランスポーテーション ・電気自動車(EV)充電設備の構築、試験
・EVの試験
・EV普及期
・充電インフラの拡充、商用化
・充電設備の拡充(ガソリンスタンドレベル)
・EV及び充電派生サービスの拡充
スマートリニューアブル ・再生可能エネルギー(自然エネルギー)の安定供給試験
・マイクログリッド試験団地
・小規模キャパシタ試験・検証
・再生可能エネルギー(自然エネルギー)の拡大及び伝送網の構築
・マイクログリッドのデモ及び普及
・大・中規模キャパシタの試験・検証
・大規模再生エネルギー発電システムの構築・運営
・マイクログリッドの実用化
スマートエレクトロシティサービス ・リアルタイム料金把握
・リアルタイム電気卸売り試験
・リアルタイム需給モニタリング試験
・卸売り電力派生商品の開発
・全国レベルのリアルタイム料金制施行
・消費者の自発的な参加促進
・電力取引形態の多様化
・電力を中心とした産業間のシナジー効果増大
・東北アジア圏での主導権確保

なお、図表中にマイクログリッドという用語が出てくるが、これは自給型の小規模な電力ネットワークのことだ。既存の大規模発電所に拠るのではなく、太陽光発電や風力発電、マイクロガスタービン、蓄電装置などからなる分散型エネルギーシステムにより、地域などのコミュニティ内の電力を供給しようという概念だ。また、キャパシタとは、電気二重層キャパシタまたはリチウムイオンキャパシタのこと。電池よりも大容量の電気を蓄電可能なことから、スマートグリッド用の蓄電装置として期待されている。

それでは次回、いよいよKEPCOのスマートグリッド実証実験についてレポートしよう。

橋本清治(はしもと・せいじ)

IT業界での30年の経験を生かし、某外資系通信機器ベンダー勤務の傍ら、エムアンドエムリサーチを運営。主に海外の通信事情リサーチやベンダーの日本進出の支援を行う。現在は特に韓国のモバイル通信事情を注視している。表面的な事実の調査だけでなく、必要があれば現地調査も行う行動派リサーチャ。“真実は体で確かめる”が身上。コンタクトはinfo@mmrjp.comまで

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