狭帯域4Gでプラチナバンド創出 楽天への「再割当」の対応策か?

新たなプラチナバンドの割当に向けた検討が始まった。提案したのはNTTドコモ。狭帯域4Gシステムの採用により、未利用のプラチナバンドを活用しようという提案の狙いはどこにあるのか。

2022年11月30日に開かれた総務省の情報通信審議会(情通審) 新世代モバイル通信システム委員会 技術検討作業班の会合で、700MHz帯に存在する未利用の周波数(715~718MHz、770~773MHz)へ、LTEAdvanced(4G)システムを導入できるかどうかの検討がスタートすることが明らかにされた。

700MHz帯では現在、携帯電話に718~748MHz(上り)と773~803MHz(下り)が割り当てられている。これらの帯域と隣接する地上デジタルテレビ放送、特定ラジオマイク、ITS(高度道路交通システム)の帯域の間に設けられている4~8MHzのガードバンド(緩衝帯域)を3MHz削り、ここに4Gシステムが導入できるかを検討していく(図表)。

図表 4G用として検討される700MHz帯の新帯域

図表 4G用として検討される700MHz帯の新帯域

新帯域の割当をドコモが提案

今回検討の対象となる700MHz帯や800/900MHz帯は、2GHz帯などの高い周波数と比べて、高層建築物の奥などにも電波が届きやすく、少ない基地局で広いエリアをカバーできるなどの利点を持つ。その一方、割当可能な帯域が限られていることから「プラチナバンド」と呼ばれている。

日本では現在、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクがそれぞれ25MHz幅×2のプラチナバンドの割当を受けている。

2019年に新規参入した楽天モバイルも、既存事業者との公正競争条件の確保に不可欠として、プラチナバンドの取得を強く要望しており、2022年10月の電波法改正で設けられた「再割当」制度に基づき、既存事業者が保有する800/900MHz帯の帯域からそれぞれ5MHz幅×2ずつの割譲を求めている。

これを受け、議論を重ねてきた総務省の「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース」は、11月8日に報告書案を発表。移行期間を再割当時点から原則5年(最大で10年)とすることや、移行に係る費用を既存事業者の負担とするなどのルールが打ち出され、楽天が望む再割当の道筋が整理された格好だ。

今回、スタートした700MHz帯の3MHz幅×2の割当に向けた検討は、タスクフォースが報告書案で「携帯電話用周波数の更なる確保に向けた検討を進めることが必要」と提言したことを踏まえて、ドコモが提案したものである。希少なプラチナバンドを通信事業者主導で創出しようとする試みといえる。

海外では導入実績あり

ドコモの提案でキーとなるのが「狭帯域LTE-Advancedシステム」の導入だ。

3GPPではLTE-Advancedについて、日本で使われている15MHz、10MHz、5MHzシステムに加え、世界市場で広く利用されてきた2GのGSM跡地への導入を想定し、狭い周波数帯で導入できる3MHz、1.4MHzシステムもいくつかの帯域で規定されている。

海外では実際、米国で800MHz帯、ベトナムおよびインドで900MHz帯に、3MHzシステムが導入されている。

ドコモの提案は、この3MHzシステムを日本でも制度化して、前述の700MHz帯のガードバンド内に導入しようというものだ。

実現にあたって懸念されるのは、ガードバンドの縮減により既存システムに悪影響を及ぼす可能性がないかである。

この点について総務省 電波部 電波政策課 調査室長の高橋文武氏は、次のように説明する。

「3MHzシステムでは、目的周波数外への不要発射(スプリアス)が、ガードバンドの検討で想定された15MHzシステムに比べて急峻に落ちる。このため、3MHzシステムの導入でガードバンドが縮小しても、他の無線システムへの影響が現状と同程度に収まるというデータがドコモから示されたことから、今回検討を開始した」

ドコモの提案のもう1つ重要なポイントは、3GPPの国際帯域「バンド28」に、この周波数が含まれていることだ。つまり、既存のスマートフォンの多くが、そのまま利用できる。

ドコモ広報部によれば、「バンド28として3GPPで規格化されており、かつ未利用の帯域を確認した」ことから今回提案を行ったという。

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