WDMやOTNに機能追加 ユーザーごとの暗号化
リボンは1997年(当時の社名はソナス・ネットワークス)、VoIPソリューションベンダーとして創業した。その後、ジェンバンド(旧ノーテルネットワークスの音声交換機部門を買収)と合併し、2017年に現在の社名に変更。そして2020年、イスラエルのECI Telecomの買収を契機として、日本のIP・光伝送装置市場にも新規参入した。「後発であるため厳しい戦いを覚悟していましたが、意外にも通信キャリアやデータセンター事業者からは歓迎されました。市場が固定化しており、新しい風を期待されていたのです」と宮下氏は明かす。
リボンの光伝送装置「Apollo(アポロ)」シリーズには、レイヤ1暗号化が可能な製品として、DWDM伝送装置「Apollo 9600」シリーズと、OTN(Optical Transport Network)スイッチ「Apollo 9900」シリーズの大きく2ラインが用意されている(図表2)。OTNスイッチはSONET/SDHやイーサネットなど様々な信号を集約して、光波長に変換、多重化して伝送する装置だ。
図表2 リボンのApolloファミリー
「今すぐ光ファイバを狙ったサイバー攻撃への対策が必要かというと、日本の多くの企業にとっては、そうではありません。しかし、将来の保険として、レイヤ1暗号化が可能な装置を選んでおくことをお勧めします」と宮下氏は語る。リボンが提供するApollo 9600/9900シリーズは、ライセンスおよび一部装置を追加することでレイヤ1暗号化機能を利用できる。このため、通常の光伝送措置として導入しコストを抑えながら、いざという時にレイヤ1暗号化を利用する柔軟な運用が可能になる。
DWDM装置の主なユーザーである大手キャリアやハイパースケーラー、データセンター事業者の間では、近年のトラフィック増加の影響を受けて、高速大容量化のニーズが増している。Appollo 9600シリーズは、競合他社が800Gbpsにとどまる中、1波長あたり最大1.2Tbpsのラインレートを実現している。後発であるリボンがユーザーに選ばれるため、業界最高峰の速度を目指した結果だ。「波長ごとに暗号化するかどうかを調整でき、クライアントに応じて暗号化した波長や高速な波長を提供し分けることもできます」(宮下氏)
OTNスイッチのApollo 9900シリーズは自営網を有しているインフラ系企業や、通信キャリアのアクセス網などで主に採用されており、1Uサイズの「OPT9901X」などをラインナップする。「小型で扱いやすく、地域のISPやケーブルテレビ事業者などにも導入しやすいソリューションとなっています。1UサイズのOPT9901XでもSFPポートを最大20本搭載しており、ポートごとに暗号化するかを選べます。例えば行政向けにマイナンバーの情報などを載せた回線のみを暗号化するといったサービスメニューが提供可能になります」と宮下氏は話す。
TDMを含むレガシーI/Fに対応 IP/オプティカル統合を加速
リボンのソリューションに共通する特徴として、宮下氏は柔軟性を挙げる。「IPレイヤと光レイヤの統合を強く意識していますが、我々のソリューションは最新のI/Fだけでなく、TDMを含むレガシーI/Fにも対応します。この柔軟さにより、IP/光統合を加速させられる点が強みです」
IP/光統合に加えて、運用自動化など管理機能の核を担うのは同社のSDNコントローラー「Muse」である。シングルコンソールで様々な機能を操作できるのはもちろんのこと、数多くのI/Fやプロトコル、データモデルに対応しているので、サードパーティを含むマルチベンダー管理を1つのコントローラーで実現する。「当然、当社の光伝送システムとルーティングシステムもMuse配下で一元管理できます。レイヤ1暗号化機能のオン/オフ切替はMuseから数クリックです」と宮下氏。セキュリティ面では米国のFIPS(連邦情報処理標準)を満たしている点も心強い。
今後、ネットワークはよりオープンで自由になっていく。そうしたなかでレイヤ1暗号化に限らず、多様な選択肢を提供できるリボンのソリューションが選ばれる機会は増えていくだろう。
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