――2010年9月にIIJ(インターネットイニシアティブ)に事業譲渡されたわけですが、どのような経緯だったのですか。
岩澤 前身のAT&Tジャパンの事業は、もともと日本IBMからネットワーク事業を引き継ぎ、国内でWANサービスを中心としたネットワークアウトソーシングサービスを展開してきました。
今回の移管は、米国のAT&Tの事業戦略上の理由です。ビジネスがグローバル化し、キャリア間の競争が激しくなるなかで、選択と集中が必要になりました。AT&Tではグローバルネットワークインフラと、米国内でのワイヤレスインフラに投資を集中させたいと考えていました。このため、AT&Tジャパンで我々が手掛けていたWAN構築・運用サービス事業への継続投資は難しいと判断しました。ですが、十分に利益が出ている事業でしたので、売却可能と判断しました。
一方、IIJは以前、トヨタ自動車やソニーと組んでクロスウェイブ コミュニケーションズを立ち上げ、WANサービスに取り組んだことがありましたが、残念ながら十分な成果を得られませんでした。しかし、顧客企業が海外にも進出していくなかで、トータルネットワークソリューションを提供していくには、やはりWANサービスが必要と感じていました。この両社の思惑が一致し、事業譲渡が成立したのです。
キャリアダイバシティで強み
――新会社の事業ドメインはどこに置いていますか。
岩澤 従来から手掛けている国内ネットワークアウトソーシングサービス事業に加え、グローバルネットワークソリューションも提供していきます。
――事業譲渡前の段階で、国内で約1600社のユーザー企業を抱えていたそうですが、それだけの企業を惹きつけていた要因は。
岩澤 1つのネットワークソリューションのなかに複数キャリアの回線を組み合わせて提供する、「キャリアダイバシティ」です。
我々は、日本IBM時代から国内キャリアのWANサービスを組み合わせて提供していますが、毎日のようにどこかで障害が発生しています。それが本社や重要拠点で発生すれば、お客様のビジネスに与える悪影響は甚大です。対策として、同一キャリアの回線で冗長化を図る方法もありますが、バックアップ回線も同時に止まる可能性もあります。しかし、複数キャリアの回線を用いれば、片方に障害が発生しても、ネットワークが止まらない可能性は飛躍的に高まります。
実際、この4年ほどは、お客様からのクレームは一切ありません。障害の発生率自体は以前と変わりませんが、お客様の業務に与えるインパクトはなく、安定したサービスを提供することができています。
――キャリアのネットワークは意外に脆弱だと。
岩澤 ハードウェアの故障が原因のケースが多いようです。二重化されているところもありますが、何らかの理由でそうなっていないところもあり、一旦止まると復旧まで相当の時間を要します。