SPECIAL TOPIC通信基盤も「保有」から「利用」の時代 Azureで次世代キャリアへの変革を支援

新たな収益源を創出しつつコスト削減を進め、それでいて社会を支えるに足る安定したサービス提供が求められる通信キャリアにとって、自社で通信基盤を保有し続けることは徐々に重荷になりつつある。マイクロソフトはその部分をAzureというパブリッククラウドで肩代わりすることで、次世代通信キャリアへの変革を支援しようとしている。

Azureならではのアプリを活かしたエッジサービスの展開も可能に

とはいえ、10年以上前にエンタープライズの領域で「クラウドなんて使い物になるのだろうか」と言われていたのと同様、Azure for Operatorsについても、果たして通信サービスに耐えうる機能や安定性が実現できるのかと懸念するのも無理はない。マイクロソフトではそうした不安を解消すべく、Azure for Operatorsに含まれるコンポーネントをAT&Tとの共同開発で拡充している。

中核となるのは、クラウド上で運用・管理できる5Gモバイルコアの「Azure Operator 5G Core」と、その運用を担う「Azure Operator Distributed Service」(AODS)だ。AODSは、いわゆるオーケストレーションの基盤となり、Azureのネットワーク全体にまたがる形で5Gコアの通信機能を管理でき、顧客が求めるセキュリティや可用性、品質を保証していく。

エッジでの多様なサービス実現を支援するコンポーネントも用意している。それが「Azure Private 5G Core」と「Azure Public MEC」で、通信キャリアが法人向けに新たなネットワークサービスとして提案できるようになっている。

図表2 コアの通信基盤に加え、多様なエッジサービスの実現も支援していく

図表2 コアの通信基盤に加え、多様なエッジサービスの実現も支援していく

(コアの通信基盤に加え、多様なエッジサービスの実現も支援していく)

Azure Private 5G Coreは、マイクロソフトが提供するハイパーコンバージドインフラ「Azure Stack Edge」上で動作するプライベート5Gの通信基盤だ。これを顧客の工場や店舗に導入することで、オンサイトでローカル5G環境を構築できる。さらに「Azure Stack EdgeというAzure用のサーバー上でローカル5Gを動かすだけでなく、同じ筐体内でMLアプリケーションなどを動かし、収集したデータを超低遅延の下で解析したり、ロボットやIoTを制御することも可能です」(大友氏)

一方Azure Public MECは、通信キャリアのデータセンター内にAzureのサーバーを設置するサービスだ。そのデータセンターがカバーするエリア全体で、MECとしてのAzureが動作する形となる。「低遅延環境でAzureのアプリケーションを活用し、スマートシティや港湾、空港といったエリア全体をカバーするMECのサービスを提供できます」(大友氏)。マイクロソフトではAzure Public MECを、通信キャリアとのレベニューシェアモデルで提供し、ともに自治体や公共施設、工場向けに提案していく計画だ。

「通信基盤をAzureに載せ替えてコストを削減し、事業を高付加価値な領域にシフトしていくだけでなく、こうした新たなエッジ向けサービスを通して自社の収入を伸ばしていくことも支援していきます」(大友氏)

国内でも採用の動き「日本流の解決法」を

業界に大きなインパクトを与えたAT&Tとの提携に始まり、マイクロソフトではさまざまな通信キャリアとの間で、Azure for Operatorsを活用した新たな通信ビジネスの在り方について議論を始めている。

たとえば海外では、約3000万人の5G加入者数を持ち、IoTデバイスも約3000万台運用しているキャリアと共同で、Azure for Operatorsに載せ替えることでどの程度コストを削減できるかを試算した。基盤をパブリッククラウドに載せることで設備の稼働効率を高め、インフラの運用コストを減らせるため、ランニングコストが約40%削減できるとの試算結果が得られている。

すでに国内でもAzure for Operatorsの採用を決めた事業者も登場した。あるMVNO事業者では、MVNO事業の展開にあたってAzure for Operatorsを採用し、コネクティビティの提供だけに終わらない新しい5GネットワークをAzure上で運用していく方針だ。

「せっかくAzure for Operatorsを活用するならば、マイクロソフトと連携し、Azureならではの新しいネットワークサービスの提供に挑戦したいとおっしゃっています。Azure上で動作するAIなどのアプリケーションやAODSを組み合わせて設備の稼働状況などを学習し、予兆保全に活かしたり、トラフィック量の予測に基づいて帯域を柔軟に制御するなど、エンドユーザーの利用シーンに合わせたネットワークの提供も視野に入っています」(大友氏)

長年、垂直統合型のビジネスモデルから強みを生み出してきた通信サービスだが、どのようにクラウドの利点を取り入れ、高い付加価値を備えたサービスを実現していくかを、あらゆる通信キャリアが模索を始めている段階だ。こうした時代の曲がり角においてマイクロソフトは、Azure for Operatorsを1つのきっかけに、「どのように責任を分け合うべきか」「段階的に移行するとすればどのように進めるべきか」といった事柄も含めながら、ともに技術的な検証や議論を進めていきたいとしている。

「明確な答えがないからこそ、さまざまな通信キャリアと話し合いながら、ともに日本流の解決法を見出していきたいと考えています」(大友氏)

<お問い合わせ先>
マイクロソフト カスタマー インフォメーションセンター
TEL:0120-41-6755(9:00~17:30 土日祝日、弊社指定休業日を除く)
URL:https://www.microsoft.com/ja-jp

通信業界の変革を支援する日本マイクロソフト:https://cloudblogs.microsoft.com/industry-blog/ja-jp/microsoft-in-business/2022/07/13/microsoft-japan-supports-the-transformation-of-the-telecommunications-industry/
Azure for Operators:https://azure.microsoft.com/ja-jp/industries/telecommunications/#overview 

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