<特集>NTN最新動向 非地上系ネットワークは通信市場をどう変革するか?NTTの地上・宇宙統合戦略 「究極のエッジコンピューティング」を実現

宇宙統合コンピューティング・ネットワークというビジョンを掲げているNTTグループ。その名の通り、宇宙と地上のネットワークなどを統合し、今までにない未知のインフラをつくりあげようとしている。

移動通信の標準化団体3GPPでは、高高度疑似衛星(HAPS)や低軌道衛星(LEO)、静止地球衛星(GEO)などから構成される5G非地上ネットワーク(NTN)について、大きな役割と期待を寄せている。3GPPのRelease17のドキュメントから一部を抜粋すると、「地上の5Gネットワークでは最適にカバーできないエリアに5Gを拡張する」「物理的な攻撃や自然災害に対する空中/宇宙搭載車両の脆弱性を軽減し、5Gの信頼性を向上させる」「航空機やドローンが5Gで接続できるようにする」といった具合だ。

ただ、3GPPが描くこうしたユースケースは、通信事業者やユーザーにとって重要な事柄ではあるものの、どうしても地上の5Gの補完としての役割にとどまる印象がぬぐえない。

そうしたなか、「NTTグループとしては地上と非地上の統合ということをNTNの主眼に置いており、我々は3GPPよりも少し広い視野でNTNを捉えている」と語るのはSpace Compass 代表取締役 Co-CEO 兼 NTT 研究企画部門 担当部長の堀茂弘氏だ。

Space Compass 代表取締役 Co-CEO 兼 NTT 研究企画部門 担当部長 堀茂弘氏

Space Compass 代表取締役 Co-CEO 兼 NTT 研究企画部門 担当部長 堀茂弘氏

NTTとスカパーJSATは2022年4月に合弁会社Space Compassを設立した。Space Compassは「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」をビジョンとして掲げ、その具体策として2つの事業を発表している(図表1)。

図表1 「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」のイメージ

図表1 「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」のイメージ

観測データをリアルタイムで

1つは宇宙データセンター事業。これは宇宙における大容量の通信およびコンピューティング基盤の構築を目的としたもので、その一環として2024年にも観測衛星などが宇宙で収集する膨大な各種データをGEO経由で地上へ高速伝送する「光データリレーサービス」を2024年度より開始する(図表2)。

図表2 光データリレーサービスの概要

図表2 光データリレーサービスの概要

リモートセンシング衛星とも呼ばれる観測衛星は、映像、あるいは電波などを放射して地球の環境を観測するもので、日本ではJAXAやアクセルスペースなどが打ち上げている。宇宙産業において今後、最も成長が期待できる分野の1つだが、課題となるのが地上へのデータ伝送だ。

「観測分野が伸びるということは、それだけたくさんの衛星が上がり、大量のデータが発生するということ。それを地上にスムーズに伝送するために光データリレーが必要になる」と堀氏は話す。

観測衛星から地上局へデータを伝送する既存のサービスは現状、地上局と通信できるタイミングや通信容量に制約を抱えている。観測衛星の多くは低軌道を飛行しているが、その場合は軌道周期(地球を1周する時間)が90~120分程度であり、地上へデータを伝送するチャンスは、地上局付近を通る5~10分程度しかなく、速度も数100Mbpsが限界だ。

光データリレーでは、宇宙に構築したデータセンターに観測衛星のデータを集約し、GEO経由で地上へ光無線でダイレクトに転送する。そのためタイミングを問わず、ほぼリアルタイムで高速データ伝送ができるという。2024年度のサービス開始時点では最大5Gbpsを予定しているが、ここにNTTが地上で使っている光通信技術を応用すれば、将来的には数10Gbpsなどさらなる進化が見込めるとしている。

「宇宙データセンターというと、あたかも地上のデータセンターを宇宙にも持っていくというイメージでとらえられがちだが、本意としては宇宙で発生するデータを宇宙でコンピューティング処理するというもの。ある意味、究極のエッジコンピューティングと思っていただきたい。最終的には光のネットワークは月まで伸ばすことを目指している」と堀氏は説明する。

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