SPECIAL TOPIC低遅延伝送に挑んだミクシィ、IP映像伝送の最新規格SMPTE 2110でインフラ構築

ミクシィが2020年6月にスタートした共遊型スポーツベッティングサービス「TIPSTAR」では、低遅延のIP映像伝送技術を駆使している。サービス開始後も次々と最新技術を導入。現在、IP映像伝送の最新規格「SMPTE ST 2110」ベースのインフラ展開を完了し、さらなる革新を進めている。

365日配信される競輪・オートレースのライブ動画とネット投票を友達と一緒に楽しむことができる共遊型スポーツベッティングサービス「TIPSTAR(ティップスター)」。ミクシィが2020年6月からスタートしたこのサービスは、最新のIP映像伝送技術に支えられている。

ミクシィ「TIPSTAR」のアプリ画面
ミクシィ「TIPSTAR」のアプリ画面

TIPSTARで配信するライブ映像は、全国43カ所以上の競輪・オートレース場からデータセンターへ送られてくる。それを加工し、映像素材としてスタジオへ伝送。さらに、クラウドを経由してユーザーへ番組を配信する。

この基盤ネットワークにおいて鍵になるのが、全国各地で同時開催されるレース映像を大量に処理するキャパシティと低遅延性だ。編集をリモートにあるスタジオや在宅、もしくはAIが行う特性上、リアルタイム性を確保するため特に低遅延性は重要な要件となる。高品質な映像を安定的に届けることはもちろん、これらの要件をいかにコストを抑えて実現するかが重要なポイントだ。

ミクシィが本格的に映像配信サービスを手掛けるのは、このTIPSTARが初めてのことだった。開発本部 インフラ室の吉野純平室長によれば、まさに挑戦の連続。「映像伝送技術に関するノウハウもそれまでなかった。ベースとなるインフラ作りも、アプリケーション作りも、ミクシィにとってかなりチャレンジングな取り組みだった」

ミクシィ 開発本部 インフラ室 室長の吉野純平氏
ミクシィ 開発本部 インフラ室 室長の吉野純平氏

慣れ親しんだ“ソフトウェアの流儀”を映像に適用
TIPSTARのサービス基盤上で映像データがどのように伝送されていくのかを示したのが図表1だ。番組の素材となるレース映像は、競輪場からデータセンターへ光回線あるいはLTE回線で伝送している。高価な専用線は用いず、圧縮したデータをベストエフォート回線で送信することでコストを低減。当初は、回線引き込み工事が不要なLTE回線を使って迅速にサービスを立ち上げ、徐々に光回線へ置き換えていった。

図表1  TIPSTAR 映像伝送のイメージ
図表1  TIPSTAR 映像伝送のイメージ

データセンターで受信した素材映像は、映像加工サーバーで無人加工したうえで、スタジオへ伝送して番組撮影で使う。この間の仕組みが最も特徴的な部分であり、サービスのリリース後もシステムを進化させてきている。

こだわったのが、映像加工・編集のソフトウェア化と、IPによる非圧縮・低遅延伝送だ。映像編集やデータ伝送に専用機材を用いるのではなく、一般的なサーバーとネットワーク機器、ソフトウェアでシステムを構成。伝送規格についても、放送・業務用映像の世界では同軸ケーブルで非圧縮のデジタルビデオ信号を伝送するSDI(Serial Digital Interface)が主流だが、これを廃した。

「私たちが慣れているサーバーやネットワーク機器ですべてを処理したかった」からで、吉野氏はその理由を次のように語る。

「ソフトウェアで映像編集をやるなかで様々なことにトライしていきたいのだが、映像用の機械ではどうしてもやりづらい。なぜなら、SDIのケーブルは正常性確認がIPより難しく、問題発生時の挿し替えもリモートからできない。映像を切り替えるために高価な機材を入れないといけないなど、私たちの習慣にはないものが出てくるためだ。ソフトウェア業界の流儀を映像に適用することによって、私たちがやりたい映像加工ができたり、効率化ができる」

加えて、“脱・SDI”は映像伝送システムのシンプル化と低コスト化にもつながる。IPによるライブ映像伝送を成し遂げるためにミクシィが選んだのが、放送システムのIP伝送規格「SMPTE ST 2110」だ。

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