電池を祖業とするマクセルは、1963年に国内で初めてアルカリ乾電池の生産を開始したことで知られる。現在はリチウムイオン電池やボタン形電池など幅広く展開しており、2019年4月に「IoT電源システム」の提供を開始した。
IoT機器と一口に言っても様々だが、その多くの電源に使われているのが各種電池や太陽電池だ。
防災用水位計のように屋外で利用するIoT機器には太陽電池がよく用いられるが、日照不足や太陽光パネルの汚れなどで発電量が低下したり、設置工事に費用がかかるといった課題がある。これに対し、IoT電源システムは「太陽電池では対応できないニーズに応える、新コンセプトの電源です」とマクセル エナジー事業本部 電池事業部 技術部 担当部長の宮本真氏は説明する(図表1)。
図表1 システム構成例(LPWA仕様)
※記載の会社名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。また、ELTRES™ はソニー株式会社の、ZETA は株式会社テクサーのSigfox はSigfox社の登録商標です。
複数のLPWA規格に対応リチウム電池と電源システムコントローラー、通信機が防水対応の筐体に収まったIoT電源システムは、太陽電池と比べると大幅にサイズダウンしており、簡単に設置することができる。
機能面では主に2つの特徴がある。
1つめに、IoT電源システムでは、センサーや通信機固有の特性に合わせて、各出力を異なるタイミングで間欠制御(接続機器の電源をON-OFF制御)していることだ。これによってシステム全体の省電力化を図っている。
動作電圧が2~3Vと低いリチウム電池で数Wの機器を間欠制御する場合、突入電流(一時的に流れる大電流)の影響で、電池電圧が低下し、システム全体がダウンすることがある。IoT電源システムは、突入電流の影響が大きくなる低温環境でもシステムダウンを抑える機能を備える。
2つめは、LTE-Cat.1、ZETA、ELTRES、Sigfoxという4つのLPWA規格に対応していることだ。
既存の「危機管理型水位計(LTE-Cat.1)」(青枠)と同等の機能を備えた電池駆動式の「IoT電源システム」(赤枠)※最上部のソーラーパネルはイメージ
導入側は動作確認済みの通信機の中から用途に応じて通信機を選択できる。IoT電源システムはそれらに対応した通信ソフトウェアを内蔵しているため、導入側は開発不要で利用することが可能だ。
通信規格ごとに一長一短があり、いくつかの規格を使い分けたいというニーズは多い。「1台で複数の規格に対応しているので、ペイロードも単一のデータ形式で扱え、グラフ化しやすいのが特徴です」とマクセル エナジー事業本部 電池事業部 マーケティング部 第一課 技師の甲斐大一氏は述べる。
国土交通省が定める「危機管理型水位計」の観測基準に基づいた実証実験では、IoT電源システムは8年以上の電池寿命が実証されたという(2倍の計測頻度と85倍の通信頻度で電池消費を加速した場合の推定値)(図表2)。
図表2 水位計用電源の実証実験結果
これを機に、太陽電池からの乗り換えを検討してみてはいかがだろうか。
<お問い合わせ先>
マクセル株式会社
エナジー事業本部電池事業部
(担当:宮本、甲斐)
TEL:075-957-8119
E-Mail:contact-maxelldengen@maxell.co.jp
製品URL:https://biz.maxell.com/ja/primary_batteries/power_system.html