企業ネットワーク最前線

<特集>ローカル5G中間報告

ローカル5Gの普及阻む4つの壁(後編) 運用自動化とパブリック5G連携

文◎坪田弘樹、村上麻里子(編集部) 2020.09.15

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コストが高い、運用が難しい―など、まだまだ課題の多いローカル5G。だが、解消に向けた技術開発も急ピッチで進んでいる。普及の鍵を握る4つのテーマについて現状と展望をレポートする。後編は「運用自動化」と「パブリック5G連携」の2つのテーマを取り上げた。

<運用自動化>AIが5Gトラフィックを最適制御 携帯電話ネットワークの通信品質は、専門家がトラフィックの傾向を日々監視・分析し、変化に応じてチューニングすることで保たれている。ローカル5Gにも当然、こうした運用が必要だ。

ただし、キャリアでない一般企業や自治体、SIer等がローカル5Gを運用するには、もっとシンプルかつ簡単にできる仕組みが不可欠だ。

この分析・制御の自動化に取り組んでいるのが、NEC システムプラットフォーム研究所である。

研究部長を務める金友大氏は、「ローカル5Gを使うのは、Wi-Fiでは満足できないお客様。だからこそ常に高い性能が出なければならない。環境の変化を自動的に識別してポリシーを制御することで、一定の品質が保たれることが重要」と話す。

 

 

NEC システムプラットフォーム研究所 研究部長の金友大氏
NEC システムプラットフォーム研究所 研究部長の金友大氏

 

 

同所が現在開発しているのが、「学習型通信分析技術」である。簡単に言えば、自動学習するAIが専門家に代わってトラフィックの分析と制御をしてくれる技術だ。

実現のポイントについて研究マネージャの岩井孝法氏は、「リアルタイム性と推定精度の向上」を挙げる。

同氏によれば、固定ネットワークに比べて無線ネットワークは「パケットロスや通信制限等が発生するため、同じアプリケーションでも場所や時間によってトラフィックが大きく変わる」のだという。現在、ネットワーク運用をAIで自動化する取り組みが各所で進んでいるが、こうした理由から無線ネットワークではリアルタイム分析が難しく、「学習しても推定精度が上がりにくい」。

 

 

NEC システムプラットフォーム研究所 研究マネージャの岩井孝法氏
NEC システムプラットフォーム研究所 研究マネージャの岩井孝法氏



加えて、同じアプリでも状況に応じてネットワークに求める性能・品質は変化する。

例えばAGVの制御なら、作業員や他のAGVとの距離が近づいた時は優先的に帯域を使い、より細かくコントロールしたい。「1つのAGVアプリでも、場面ごとにネットワークから見た目的とQoE(Quality of Experience)が異なる。それを識別して制御しなければならない」と岩井氏は話す。

自律学習しモデルを更新NECが開発した学習型通信分析技術は、スループットの変動やパケットの到着間隔など一般的なパケットキャプチャで取れる情報を基にリアルタイム分析が可能だ。さらに、未知のトラフィックパターンを判定すると新たなモデルを追加・更新する自動学習の仕組みを開発。「100ms以下で分析し、その分析結果を受けて更新する仕組みを実現した」(岩井氏)。

これにより、使用しているアプリや状態変化を判定し、ポリシーの自動的な制御が可能になる。

 

また、面白い使い方として、カメラ映像の伝送にこの技術を適用すると、トラフィックの変化から撮影範囲の人やモノの数も推定できる。「人が入ったら伝送品質を上げる、音声通話をするときはそのQoEも上げるといったことが自動的にできる」(同氏)という。


なお、ポリシー設定をユーザー自身が行う必要はない。「どんな条件で、どのアプリの通信品質を上げたい」といった条件さえ決めれば、分析結果と制御を連動させて自動的に処理できる。幅広いユースケースで使える技術だ。

2021年度の実用化を目指して、技術の熟成を進める。
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