[5G思考#7]東京都、前橋市 – 通信インフラが都市の生き残りを左右する

首都と地方都市。規模や役割は異なるが、直面する課題は同じだ。このまま行けば、都市としての機能が失われるリスクがある。未来を拓けるのは、5Gを早期に整備し、AIなど先端技術の活用を推し進めた都市だ。

東京はスマートな都市に生まれ変わる――。

東京都が2月7日に発表した「スマート東京実施戦略」は、デジタルトランスフォーメーション(DX)によって東京のポテンシャルを引き出し、都民の生活の質(QOL)を向上させる「スマート東京」の実現に向けた具体的な取り組みを明らかにしたものだ(図表1)

図表1 スマート東京の全体像

図表1 スマート東京の全体像

背景には、国際的な都市間競争への遅れに対する強い危機感がある。

海外では、各地で最先端の通信インフラ技術を活用したスマートシティ化が進んでいる。

そうした都市では、住民のQOLが高まるだけではない。スタートアップや大学などが集まり、イノベーションによる新たな価値も創出する。経済効果をもたらすのはもちろんだが、都市としての魅力が高まり、国際競争力の強化にも一役買うことになる。

翻って日本は第4次産業革命への対応の遅れもあり、近年、国際的な存在感が低下している。さらに、少子高齢化による人口減少や気候変動による災害の増加などの課題も抱える。

折しも2020年から5Gの商用サービスが始まる。5Gの高速大容量・低遅延・多数同時接続という特徴は、様々な業界に変革をもたらす可能性が高いが、行政も例外ではない。そこで東京都は昨年8月、21世紀の基幹インフラとして「電波の道」、すなわち5Gネットワークを早期に展開し、社会課題を解決するとともに、新たな産業を創出し都市力を強化する「TOKYO Data Highway基本戦略」を打ち出した。

Wi-FiやLPWAも活用スマート東京実施戦略において、「電波の道」による「つながる東京」の実現は重点施策の1つとして掲げられている。スマートシティとは、フィジカル空間とサイバー空間が融合した都市のことだ。通信インフラの性能・品質が、都市の魅力そのものを今後さらに左右していく。

東京都は5Gアンテナ基地局等の設置を促進するため、都道や橋梁、バス停など都が保有するアセットを通信キャリアに積極的に開放する。現在、都が保有する土地・建物、計1万5033件(1月24日現在)がデータベース化し、公表されている。4Gアンテナの設置件数はわずか67件。積極開放により、「そのすべてにアンテナが設置されたと仮定すると、5Gでは約230倍の可能性がある」と東京都 戦略政策情報推進本部 ICT推進部 情報企画担当部長の荻原聡氏は話す。

東京都 戦略政策情報推進本部 ICT推進部 情報企画担当部長 荻原聡氏
東京都 戦略政策情報推進本部 ICT推進部 情報企画担当部長 荻原聡氏

東京都では、東京オリンピックの競技会場およびその周辺、都庁のお膝元の西新宿、東京都立大学のキャンパスがある南大沢を重点整備エリアとして、いち早く整備を進める。

東京オリンピックの競技会場には、大会期間中、多くの観客が訪れることが予想される。会場やシャトルバスの発着場などにWi-Fi環境も整備し、必要な情報の検索・収集や観戦体験の発信をスムーズに行えるインターネット環境を提供したいという。

また、西新宿では都保有のアセットを活用し、5Gアンテナを整備したり、5G、Wi-Fiのアンテナやデジタルサイネージを搭載したスマートポールを設置し、「つながる街」を早期に作る。併せて5G関連のスタートアップの集積拠点を都庁近くに設けるほか、将来的には自動運転の実証実験なども計画しており、西新宿を5G活用の先端的なモデルケースとしたい考えだ。

5GやWi-Fi以外にも、LPWAやBluetoothを適材適所で活用し、いつでも、誰でも、どこでもつながる都市の実現を目指している。

月刊テレコミュニケーション2020年3月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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