企業ネットワーク最前線

【特集】ネットワーク未来予想図2020

量子コンピューター時代の暗号通信 2024年にも民間企業で対策開始?

文◎松本一郎(編集部) 2020.03.03

  • bookmark
  • Teitter
  • 印刷

米NISTは、量子コンピューターでも解読できない暗号方式「PQC」の策定を急いでいる。企業は2024年頃にも、量子コンピューターに耐える新暗号を実装する準備に追われているかもしれない。

 
量子コンピューターは思ったより早く、身近なものになるかもしれない。Googleの科学者が2019年10月、独自開発した量子プロセッサーを用いて実験を行い、既存のスーパーコンピューターで約1万年かかる計算を数百秒で実現したとの論文を発表した。

12月にはAWSがスタートアップと提携して、クラウドから量子コンピューティングを利用できるサービスを開始。他にもインテルが12月に量子コンピューターでの利用を見込んだ半導体の開発を発表するなど、量子技術関連の動きが活発化している。医薬品開発など、膨大な情報を解析する分野などでイノベーションを起こす可能性がある。

ただ、良いことばかりではない。現在普及している暗号技術の多くは量子コンピューターを想定しておらず、簡単に解読されてしまう危険があるのだ。

例えば、インターネット通信で広く用いられているSSL/TLSの暗号化方式には公開鍵暗号が使われているが、これが無力化する可能性がある。結論から言えば、当面は心配ないものの、早ければ4 年後の2024年には企業のセキュリティ担当者は対応を迫られることになるかもしれない。

素因数分解を高速に公開鍵暗号方式の詳細な仕組みについては割愛するが、SSL/TLSで使われるRSA暗号方式は「ダイヤルロック」のイメージだ(図表1)。RSA 暗号では素因数分解の計算の困難性をその安全性の根拠として利用している。素因数分解では自然数を素数の積の組み合わせに分解するが、この組み合わせさえ分かれば解読できる。ただ、その組み合わせを即座に導ける計算方法は今のところ存在していない。

 

図表1 RSA暗号のイメージ
図表1 RSA暗号のイメージ


また、現状では世界最速のスパコンを用意しても正面から解読することはできない。「現状のRSA暗号は616桁(2048bit)の数を素因数分解する必要があるが、世界記録でも239桁の解読が限界だ」と国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)で主任研究員を務める篠原直行氏は説明する。このように安全性が保証されているため、RSA暗号は広く普及しているのである。また、主要な公開鍵暗号方式としてはもう1つ、「楕円曲線暗号(離散対数問題)」もあり、クレジットカードなどに使われているが、「いずれの方式でも量子コンピューターで高速に解読される方法が見つかっているため問題となっている」と篠原氏は指摘する。

国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT) サイバーセキュリティ研究所 セキュリティ基盤研究室 主任研究員 博士(数学)の篠原直行氏
国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT) サイバーセキュリティ研究所
セキュリティ基盤研究室 主任研究員 博士(数学)の篠原直行氏



ただし、「現状は全く心配いらない」と篠原氏は続ける。量子コンピューターの研究はまだ発展途上で、現行の公開鍵暗号を解読できるようになるのは当分先だと予測されているためだ。「現在の量子コンピューターでは(素因数分解について)ヒント付きで21(3×7)を解くのがやっとだ」(篠原氏)。
続きのページは「business network.jp」の会員の方のみに閲覧していただけます。ぜひ無料登録してご覧ください。また、すでに会員登録されている方はログインしてください。

スペシャルトピックスPR

softbank2003
aryaka2003
waf2003

>> 今月の月刊テレコミュニケーション

月刊テレコミュニケーション【特集】6Gへ Beyond 5Gへの挑戦
<Part1>6Gは究極の無線通信 <Part2>総務省の6G推進戦略 <Part3>韓国の6G商用化は2028年 <Part4>100ギガ無線へのトビラを開くテラヘルツを人類の手に <Part5>6Gの重要コンセプト「超カバレッジ拡張」 <Part6>6Gへつながる進化の道筋「5G evolution」の全貌 

[インタビュー]東京大学 教授 中尾彰宏氏「ローカル5Gに価格破壊 王道と違う6Gへの道を探求」 [ソリューション特集]スモールビジネスWi-Fi [事例研究]ミクシィがホワイトボックス導入 ほか

>>詳しい目次を見る

ホワイトペーパー

スペシャルトピックス

都築電気テレワークと健康経営の実践4年目
その知見をワンストップで提供

働き方改革を推進する都築電気がテレワークに最適なグループウェア!

ドコモ・システムズNTTグループ23万人を支える
テレワークツール

伝統的な日本企業が作ったツールだから、かゆい所に手が届く!

WhatsUp Goldネットワーク監視に圧倒的使い勝手
安価な導入コストでも厚い支持

中小企業から通信キャリアまで、WhatsUp Goldが人気の理由とは?

MOVEit Transfer / MOVEit Automationデータ保護新時代のファイル転送
HIPPA、GDPRなど各種規制に対応

主要データ保護規制に準拠した安全なファイル転送ソフトの決定版!

moconaviBYODもセキュリティもこれひとつ
本当に明日からできるテレワーク

業務システムのリモート利用や公私分計をセキュアに実現するmoconavi

アライドテレシススモールビジネスのWi-Fi整備は
プロにおまかせ!

アライドテレシスなら安く・早く・楽に・安全に導入・運用してくれる

ソネットSMBに“ちょうどいい”Wi-Fi

高コストはかけたくないが、家庭用では性能が足りない。そんなジレンマを解決できるWi-Fiがあった!

ジュニパーネットワークス“ただのSD-WAN”はもう要らない!
LANもWi-Fiもすべてクラウド管理へ

今必要とされているのは、
“SD-WAN+α”のソリューションだ。

Citrix SD-WANシトリックスといえば「UX重視」
その哲学はSD-WANにも!

情シスも現場も幸せになれる
「SD-WAN」がここにある。

ソフトバンク目的・用途別にSD-WAN使い分け!
ソフトバンクが“3つめ”を出す理由

IaaS利用に最適な新SD-WANで
企業のクラウドシフトをサポート!

ブロードメディア・テクノロジーズAryakaの“SD-WAN as a Service”
なら全部お任せできる!

AryakaのSD-WANはコアからラストマイルまで一括で運用を任せられる

東京エレクトロンデバイスクラウド基盤にお勧めのWAF
高い検知性能でコスト削減

WAF市場のリーダー、F5製品は多角的分析による検知精度の高さが特徴だ

一般社団法人新規事業・新規市場創出研究会国内唯一の5G/6G調査研究会!

「5Gでの日本の遅れを取り戻したい」。5G、6G、MaaSをテーマにした調査研究会が4月に運営開始する。

sXGPsXGPはローカル5G導入の第一歩

まもなく帯域が拡張されるLTEベースの自営無線「sXGP」は、ローカル5G導入のファーストステップとなる!

マクニカネットワークスHACCP対策の切り札となるIoT
LoRaWANで冷蔵庫内もデータ取得

食品業界に義務付けられるHACCP。IoTで手間と人為的ミスを削減できる

住友商事マシネックスついにオラクルがSD-WANに参入!
 クラウド接続に最適な高品質NW

Oracle Failsafe SD-WANは、ネットワーク品質を劇的に変化させる。

APRESIA Systemsローカル5G参入を強力サポート

APRESIA Systemsの「ローカル5Gシステム」はローカル5Gに必要な機能に絞り込み、導入を強力サポート

アクセスランキング

tc_banner191122

「通信」の力でビジネスを進化させるbusinessnetwork.jp

Copyright(c) 2020 RIC TELECOM Co.,Ltd. All Rights Reserved. 記事の無断転載を禁じます