ロシアNo.1キャリアのビッグデータ活用術「340万人の批判者を原因別に分類」

1億超の加入者を抱えるロシア最大の携帯電話事業者モバイル・テレシステムズ(MTS)は、データ分析に特化した専門チームを持つ。その能力をどう活用しているのかを、責任者であるヘッド・オブ・ビッグデータ・コマーシャルプロダクツのアレクセイ・マーモントフ氏に聞いた。

――ロシア通信業界の現状から教えてください。

マーモントフ 欧米の先進国と大きな違いはなく、モバイル市場はすでに成熟しています。現在の一番の成長要因はIoT関連です。

他の先進国と比較したロシアの特徴は2つ挙げられます。ARPUが非常に低いことと、いたるところで高速なモバイルインターネットが使えることです。そのため、携帯事業者はかなり強いプレッシャーを受けています。ARPUの割に質の高いサービスを提供しているため、運用の効率化が必須なのです。常にコストの最適化が求められています。

一方で、我々には高速なモバイルインターネットをベースとして、加入者に対して様々なデジタルサービスを展開できるチャンスがあります。ロシアの大手携帯事業者はいずれも“土管”としてのネットワークを売る企業から、消費者向けサービスのエコシステム全体を提供する企業へ変容しようとしています。

顧客分析・予測を成長の糧に――MTSの注力ポイントは何ですか。

マーモントフ 消費者向けサービスのポートフォリオを拡充する戦略を進めてきました。モバイルブロードバンドや衛星通信、IPTVサービスのほか、モバイル向けの音楽/動画ストリーミング、テレメディスン(遠隔医療監視)、ゲーム、電子書籍などです。また、銀行やロシア最大規模の小売チェーンも運営しています。

このようにお客様と接するチャネルを増やしていくことで、お客様と多様なコミュニケーションが行えるようになりました。これを活かすため、ビッグデータや機械学習、AI技術の開発を進めてきました。

――具体的にどのような取り組みをしているのですか。

マーモントフ ビッグデータ分析のユースケースの1つにNPS(ネットプロモータースコア)分析があります。

――NPSとは、顧客ロイヤルティや継続利用意向を測るための指標ですね。

マーモントフ 我々にはお客様のインターネット上の活動や位置情報、電話/SMSのコミュニケーションパターン、オフライン購買活動、利用デバイス、デジタルアプリの利用状況等の詳細な記録があります。60超のシステムから得られるデータを活用して、顧客1人ひとりについて詳細にNPSを分析する基盤を構築しました。ロイヤルティが高くMTSを支持しているプロモーター(推奨者)が誰なのか、反対に、誰がMTSに対して批判的なデトラクター(批判者)であるのかを推定できます。

例えば、あるお客様が批判者になった場合、過去にどんな問題があったのか、その際にカスタマーセンターとどのようなやり取りが行われたのかが詳細にわかるので、高い精度でスコアを予測できます。

月刊テレコミュニケーション2019年7月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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