企業ネットワーク最前線

<特集>つながる工場のネットワーク入門 第1回

「産業用イーサネット」の世界は一般オフィスとはココが違う!

文◎唐島明子(編集部) 2017.08.01

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工場のIoT化では、工場をインターネットなど外部のネットワークに接続する。そのためには、工場内部を理解する必要があるが、情報系システムとは異なる独特な領域だ。工場のネットワークはどうなっているのか。

 
世界中で工場IoT(Internet of Things)の動きが活発化している。日本の製造業もその例外ではなく、工場をネットワーク化する取り組みが進んでいる。

「私の工場は、すでにネットワークにつながっている」。こう宣言する工場長はいるかもしれない。

確かに工場はネットワークでつながっている。しかし、それは工場内の製造設備を接続するOT(Operational Technology)のネットワークであり、工場内に閉ざされている。組立加工作業を自動化するFA(Factory Automation)や、石油精製プラントや製鉄プラントなどの素材産業のプロセスを自動化するPA(Process Automation)の手段として導入されたものだ。

工場のIoT化では、OTの世界とITの世界を融合させることになる。工場をインターネットなど外部のネットワークにつなげれば、工場内に閉じ込められていた製造ラインのデータを、クラウドやデータセンターなどの工場外に集められるようになる。クラウドやデータセンターで可視化・分析したデータは、本社や別拠点の工場からもアクセスできる。

しかし、現実的には、ほとんどの工場はまだITと融合できていない。

これから工場を外部と接続するには、まずは工場内にあるOTのネットワークを理解することが必要だ。そこで今回の第1回ではまず、工場内にあるネットワークの全体像を確認しよう。

工場ネットワークの3階層一般的に、工場の製造ラインや設備で利用するネットワークは、大きく3つの階層に分けられる。上から①「制御情報ネットワーク」、②「コントローラー間ネットワーク」、③「フィールドネットワーク」だ(図表1)。

 

図表1 工場ネットワークの3階層[画像をクリックで拡大]
図表1 工場ネットワークの3階層


まず、①制御情報ネットワークは、「MES(Manufacturing Execution System)」や管理用PCを接続するところだ。MESは、製造現場の仕掛品などの状況を把握しながら、製造計画に基づいた作業スケジュールを組み立てたりする役割を担う。

このネットワークでは古くから、TCP/IPとの組み合わせで利用する、いわゆる標準的なイーサネットが利用されてきており、WindowsやLinuxベースの機器がつながっている。IT担当者にも馴染みのある部分だ。

独自に進化した工場ネットワーク他方、②コントローラー間ネットワークと③フィールドネットワークは、これまでITに携わってきた人にとっては未知の領域だ。

工場には、製造設備を動かすためのコントローラーやフィールド機器がある。②コントローラー間ネットワークは、複数のコントローラーを接続するネットワークで、コントローラー同士で同期を取ったり工程間で連携したりする際の通信で利用する。

工場にあるコントローラーは、PLC(Programmable Logic Controller)やDCS(Distributed Control System)だ。PLCは一般的に、FAの分野で利用されている。人手で行われてきた部品の加工・組立作業を、産業用ロボットやベルトコンベア、自動搬送機などに置き換えるが、それらの機器を動かす順番・タイミング・回数などをコントロールするのがPLCだ。

DCSはPAの分野で利用される。プラントでは、原料がパイプやタンクを通過しながら化学変化して、最終的な製品が仕上がる。その際、例えば炉の中の原料に熱が加わるよう、温度センサーの値を確認しながら、熱源となるバルブの開閉をコントロールして温度調整し、化学反応を最適化するのがDCSの役割となる。

そして、③フィールドネットワークは、コントローラーとフィールド機器の間でデータ交換するためのネットワークだ。一例として、各種センサー、モーター、温度調節器、バルブなどがPLCやDCSとつながる。

②と③のネットワークでは、オフィスで利用されているような標準的なイーサネットは利用されてこなかった。RS-232CやRS-485などのシリアル通信でコントローラーとフィールド機器を接続するなど、独自の進化を遂げてきた。

その理由は、これらのネットワークでは、高い信頼性やレスポンス性能が求められるからだ。普段、インターネットをしていると、いつもはサクサクとWebサイトが表示されるのに、たまに読み込みに時間がかかってしまうことがある。それは標準的なイーサネットが、通信速度や遅延時間を保証しないベストエフォート型であることにもとづくが、そのような現象は製造現場では許されない。

実際にフィールド機器を動かすためのデータが流れるネットワークでは、一定の時間内に確実にデータ交換を完了させる必要がある。具体的には、②コントローラー間ネットワークは数十ミリ~数百ミリ秒、③フィールドネットワークでは数ミリ~数十ミリ秒、工作機械や産業用ロボットのモーション制御など特に高精度なコントロールを行うケースでは数ミリ秒以下のレスポンス性能が要求される。

これらの性能を満たすようなネットワークを提供すべく、コントローラーやフィールド機器のメーカーは、独自プロトコルのネットワークを開発してきた。
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