企業ネットワーク最前線

eSIMで拡大するIoTグローバル市場――新仕様でApple SIM型事業も

文◎藤井宏治(IT通信ジャーナリスト) 2016.12.07

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チップ型のeSIM(ジェムアルト提供)

加入者情報を書き換え、異なる事業者のネットワークに接続できる「eSIM」の展開が広がってきている。今年策定されたコンシューマー向け仕様が、携帯電話販売の形を変える可能性もありそうだ。

 

M2M/IoT分野での活用が期待されているeSIM(embedded Subscriber Identity Module)の展開がいよいよ本格化してきた。

スマートフォンをはじめとする携帯電話端末では、電話番号、加入者識別番号などの通信プロファイル(加入者情報)を記録したSIMカードを挿入することで通信が可能になる。eSIMはこの通信プロファイルをネットワーク経由で書き換え、接続する事業者を変更できる新タイプの「SIMカード」だ。携帯電話サービスの業界団体GSMAが、その技術仕様を策定している。

SIMカード型の「eSIM」もeSIMには、(1)5×6mm角のICチップにSIMカードの機能を搭載し、電子基盤に組み込んで利用する「チップ型」と、(2)従来のSIMカード(25×15mm)を書き換え可能にした「カード型」の2タイプがGSMAで規格化されている。

(1)チップ型は、車や産業機器などに組み込んで利用するために開発されたもので、車をネットに接続して快適性や安全性を向上させる「コネクティッドカー」での利用が期待されている。

(2)カード型は、既存のM2M通信モジュールのSIMカードと挿し替えて手軽に実装できるようにしたものだ。

eSIMは、本来はチップ型のような「組み込み用SIM」を表す言葉だが、現在ではGSMAで標準化された書き換え可能なSIM(チップ型とカード型)の名称として使われることが多くなっている(図表1)。本稿でもeSIMをこの意味で用いる。

 


図表1 eSIMのコンセプト
図表1 eSIMのコンセプト

 

日本では、NTTドコモが2014年6月から「M2Mプラットフォーム」のソリューションとして、海外でM2M機器を展開する企業にこの2タイプのeSIMの提供を行っている。ドコモでIoT営業推進担当部長を務める中村雅彦氏は「eSIMは先駆的な取り組みだったが、ここにきて海外の携帯電話事業者のeSIMへの対応も進み、引き合いが非常に多くなっている」と語る。

 

NTTドコモ 法人ビジネス本部 IoTビジネス部 IoT営業推進担当部長 中村雅彦氏
NTTドコモ 法人ビジネス本部 IoTビジネス部 IoT営業推進担当部長 中村雅彦氏


ドコモではeSIMの主なユースケースとして、次の2つを想定している。1つはM2M機器を海外に輸出している企業がeSIMを用いることで、国ごとに異なるSIMカードを装備する手間を省き、製造・物流の効率化を図るというもの(図表2)。

 


図表2 NTTドコモが想定しているeSIM のユースケース
図表2 NTTドコモが想定しているeSIM のユースケース

 

もう1つは、複数の国にまたがってM2Mサービスを展開している企業が、ローミングではなくそれぞれ国の事業者のサービスを割安なローカル料金で利用するといったケースだ。

産業機械大手のヤンマーはすでに、ブラジルに輸出する製品にドコモのeSIMを搭載している。その狙いの1つには、「ブラジルや中国、中東などでは恒常的にローミングで接続することを禁止している。こうした国に機器を輸出する際にeSIMを導入することで、現地の通信事業者の回線を利用できる」(中村氏)ことがあるという。海外での規制への対応もeSIMの導入目的となるのだ。

今年6月には、KDDIがトヨタと共同で構築するコネクティッドカーのグローバル通信プラットフォームでeSIMを活用していくことが発表された。トヨタは、2020年には日本・米国市場で販売する車の大半をこのプラットフォームに収容することを計画しているので、eSIMの展開もかなり大規模なものになるはずだ。

KDDIでこの事業の立ち上げを担うグローバルテレマティクス部の山﨑升一氏は「トヨタ以外の自動車メーカーにもこのプラットフォームを使って頂くべく、話を進めている」と明かす。実現すればeSIMの活用もさらに進むことになる。

 

KDDI
(右から)KDDI 商品・CS統括本部 商品技術部長 辻大志氏、ビジネスloT推進本部 グローバルテレマティクス部 先行開発グループリーダー 山﨑升一氏、グローバルテレマティクス部 ネットワーク技術グルーブマネージャー 丸山真吾氏


こうした動きは、もちろん日本に限ったものではない。GSMAは今年2月、ゼネラルモーターズ、ジャガーランドローバー、ルノー日産、ボルボ・カーズなどの大手自動車会社が、GSMA仕様のeSIMのサポートを表明したことを明らかにしている。GSMAによると、eSIMを活用したソリューションを展開している携帯電話事業者は、今年2月時点で22社に達したという。

ICカード最大手でeSIM関連製品の展開に力を入れているジェムアルト(本社・オランダ)の米沢正雄氏は「すでに20以上の案件が進んでいる。欧州を中心に、北米、最近ではアジアにも導入が広がってきた」と明かす。海外ではスマートメータや決済端末にも使われるケースもあるという。

 

ジェムアルト フィールドマーケティング マネージャー 米沢正雄氏
ジェムアルト フィールドマーケティング マネージャー 米沢正雄氏


今年7月にはサムスン電子が、コンシューマー向けでは初のeSIM 対応製品となるスマートウォッチ「Galaxy gear S2 Classic 3G」をフランスの携帯電話事業者オレンジを通じて発売、8月にはイタリアのTIMでの扱いも始まった。

初のコンシューマー仕様eSIM対応製品となったGalaxy gear S2 Classic 3G
初のコンシューマー仕様eSIM対応製品となったGalaxy gear S2 Classic 3G

 

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